暇なときは炊事場に行く生活を続けていると、炊事場で働く方と仲良くなってきた。
自由に使ってもいいと許可をもらった。
つるみちゅとはたまに会って、友達の話とか学生生活の話をしていた。
甘いものをくれるので楽しみではあった。

ここの構造は歩いてなんとなく理解できた。
うろついている私のことを見ても誰も突っかかって来なくなった。
挨拶したらちゃんと返してくれるし。
そういえば鯉登はあと一か月もすれば昇進?して旭川に行ってしまうらしい。
は〜あ、つまんない。
あれだけ弄り甲斐のある奴そうそういないのに。

今日は日曜だから兵舎の外にいる人も多いから、人口密度が低い。
暇なので炊事場に来てお手伝いをしていた。
そうすると誰かがドタドタと近付いてくる。

「勅使河原!」
「鯉登だ」
「出かけるぞ!」
「何で?」
「何でって…お前と出かけたいからだが」
「私外出ていいの?」
「許可は貰った。行くぞ」

鯉登が嵐のようにやってきて私を誘ってまた炊事場から出て行った。

「美優ちゃん、行かないと」
「いいのいいの。鯉登はちょっと無視したぐらいが面白いから」

そのまま炊事場で手伝いをしていると、鯉登が私をでかい声で呼びながらまた炊事場に戻ってきた。
その顔は怒っていて思わず笑ってしまう。

「勅使河原!行くと言っているだろう!行くぞ!」
「怒ってるうける」
「キェエエ!何を笑っている!」

鯉登が私の腕を掴んで歩き出したので笑う。
炊事場の方々にヒラヒラ手を振ると振り返してくれた。
そのまま兵舎を出ると、やっと腕を離してくれた。

「どこ行くの?」
「勅使河原はあまり街に出たことがないだろう、だからおいが案内しちゃろうかと…」
「そうなの?ありがとう〜!街気になってたんだよねー」
「そうか!では行くぞ」

宛もなく町を歩くとミルクホールなるものを見つける。
何だあれは。
近寄って店の中を覗いてみると、どうやらカフェらしき所らしい

「どこに行く」
「ここ行きたいけど金がない…」
「おいが出してやっ」
「流石両家の息子!行こう!」

ミルクホールに入って席に着く。
なるほど牛乳と軽食を出してくれるらしい。
うーん…悩むけどここはカステラかな…
鯉登に伝えると注文してくれた。

「この時代って鯉登の歳で結婚とかしてる人多いの?」
「多いだろうな」

兵舎の中では控えていたがやっぱり恋バナが一番楽しい。
鯉登の歳で結婚が当たり前って、私は滅茶苦茶行き遅れってこと?

「私のところにも縁談の話は来ているが断っている」
「何で?どうせいいとこのお嬢様なんでしょ?いいじゃん」
「私は……私の隣に並んで歩んでくれるような女性がいいから」
「お嬢様なら着いてくるって!」
「まあ貴様にはわかるまい」
「わかんないけど〜お嬢様に会ったことはないの?」
「あるが…」
「え〜じゃあそのお話聞かせてぇ?」

両家の子女とお見合いをした話を聞かせてもらう。
そんなことが本当に行われていたのか…と感慨深い気持ちになってしまった。

「それに私は今就いている任務が一通り終わるまで嫁を取る気はない」
「その金塊争奪話百ちゃんから聞いたけどやばそうだよね」
「?!お前も聞かされていたのか!」
「今つるみちゅが何やってんのか聞いたら教えてくれたよ」
「あいつ……!」

鯉登がまた顔芸を披露していると店員さんが目当ての物を持って来てくれた。
カステラ…!
下にザラメがついていて最高だ。
私の好みを熟知してやがる…

「いただきまーす」

鯉登はパンを食べていた。
パンとかもう何年振り?ってぐらい久しぶりに見た。

「ねえ、半分あげるから半分ちょうだい」
「構わない」

カステラを小さく分けて、とりあえず一口食べる。
美味しい〜!!
これこれ洋菓子のこの砂糖感!
これを待ってたんだよ…
そしてこのカステラを牛乳につけると…
更に美味しい!!!
鯉登に残りを渡すと半分になったパンを渡された。

「…新しい食器をもらうか」
「いやそのまま使いなよ。え…もしかして私が口を付けた食器はもう使いたくない、とか…」
「そんな訳なかろう!……使っていいのか」
「私は全然いいよー」

間接キスとか今更なんてことない。
でも待って。
明治時代ってそういうのに厳しかったりする?
…でも鯉登もうフォーク使っちゃってるしもういっか。
パンおいしい〜

「勅使河原、さっきカステラを牛乳に漬けていたが美味しいのか…?」
「美味しいからつべこべ言わずに漬けなさい」
「あ、ああ…やってみる」

鯉登が恐る恐るカステラを牛乳に漬ける様を見る。
両家のお坊ちゃんはこんなことしたことがないんだろう。

「うまい!うまいぞ勅使河原!」
「そうだろう!わかったか鯉登よ!」

鯉登が美味しそうに食べていたので私もどや顔をしてしまった。
洋食食べると令和が懐かしくなっちゃうなー


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