勅使河原美優という女について、私はたまに考える。
彼女がコタンを出て半年になろうか。
罠に掛かったリスを解体しながら彼女と過ごした半年について考える。
彼女は未来から来た人間だった。
最初は疑念に過ぎなかったが、それは確かに本当だった。
他人との間に壁などないかのように美優は振る舞う。
コタンにいる間も、子供たちに色んな話を聞かせていた。
主には未来にあるお伽噺だ。
子供たちが聞きたいと美優にせがむので、話をしてやっている姿を何度も見かけた。
時には私もその話に耳を傾けた。
抑揚を付けて楽し気に、そして悲し気に話す様はとても耳障りがよかった。
過去、しかもアイヌということで美優には色々は苦労があったように思える。
食も文化も何もかも違うと彼女は言っていた。
それでもその一つ一つを楽しもうとしている姿は、見ていて気持ちのいいものだった。
私の役に立ちたいと、弓も頑張って練習していた。
柔らかい指に肉刺が沢山出来ていたのも知っている。
それでも頑張る姿に私も応えたいと思った。
彼女のひたむきな姿に、私は信頼を安心を憶えた。
アチャのこと、レタㇻのことを話すと美優は号泣していた。
力になりたいと言ってくれた。
その夜美優は私を抱き締めて眠った。
少し涙が流れてしまったのは秘密だ。
美優が街にでて働くと言った時、私は美優を引き留めないと決めていた。
美優のことだから、私が引き留めたらここに留まることを分かっていた。
自分の道を行くのがギャルだと美優は言っていた。
それがギャルなのであれば、私もギャルに倣って彼女の行く道を見届けたいと思った。
普段は隠してある美優の置いていった大きな荷物を、時折広げて中身を見てみる。
美優と数人が映った小さな写真のようなものが何枚も入っている。
顔が少し違うのは何故だろうか?
それから未来の服を見ていると美優がまだここにいるような気がする。
美優は今どこで何をしているのだろうか。
何となく、彼女はどこかで楽しく暮らしている気がする。
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