勅使河原美優という女について、俺は時折考える。
彼女がここに来てもう半年が過ぎていた。
声を掛けた自分が悪いのだが、厄介な人間を引き入れてしまったと思う。
勅使河原はだいぶここの生活には慣れていて、兵士達も勅使河原がいることを当たり前のように受け入れている。
この男所帯の中で彼女が襲われていないのは、鶴見中尉の客人であること、それから彼女の分け隔てない人間性にあると思う。
勅使河原は来てから三か月程は洋菓子や洋食の試作に勤しんでいた。
それが落ち着くと次に洋服の制作に取り組んでいた。
余った布を貰ってきたり街で布を買い、自ら服を仕立てていた。
俺にも洋服をくれた。
てぃーしゃつ?だとか言っていた気がする。
夏にはかなり重宝した。
親睦会や送別会の度に勅使河原は酒豪伝説を残していた。
それから余興も必ず準備してくるので、勅使河原は本当に飲み会が好きなんだろう。
勅使河原は時折勝手に訓練にも参加していた。
歩行訓練の途中まで参加して勝手に離脱し部屋で寝ていた、なんてこともあった。
勅使河原が持参していた荷物は夏には返却された。
鶴見中尉が大事に保管していたが、特に危険性がないと判断されたのだろう。
一人での外出許可が出たのも同じ時期だった。
しばらく見張りを付けていたが、街を散策したり住人と話すだけで特に変わったこともなかったので一人で好きに外出させるようになった。
鶴見中尉とは最初こそ緊張感のある対峙だったが、それ以降はただの雑談をしていた。
敬語も使わず他の兵士と同じように鶴見中尉に接するので、こちらが肝を冷やしてしまう。
鶴見中尉はそれを咎めず、機嫌よく話を聞いていた。
残念ながら勅使河原は理系だったようで歴史や地理には詳しくなかった。
それでも未来の技術や文化に鶴見中尉は興味津々だった。
最初のあれが嘘のようだ。
勅使河原はあれを仕事モードだと言ったが、あれ以降その仕事モードを見たことがない。
勅使河原は結構強かで、我々が思っている以上に頭の回る奴かもしれない。
鶴見中尉も同じ考えのようで、自由にさせていいが手綱は握っておけと言われた。
勅使河原は鶴見中尉から舶来の化粧品や肌に塗るものを受け取っていた。
化粧をして自分で作った服を着て兵舎をうろついている姿を何度も見かけた。
この時代では見たこともない化粧をしていたのでまじまじと見ると、流石に恥ずかしいと言われた。
勅使河原作の服は足や腕の露出が激しく、何度か注意したら部屋で着ると渋々言っていたのを覚えている。
彼女が英語を教えていた鯉登少尉は旭川での任務に従事している。
彼は鶴見中尉から彼女と仲良くなっておけと指令を受けていたが、それは上手くいっているように見えた。
勅使河原も鯉登少尉を気にかけていたようだし、この関係性がうまく使える時が来るかもしれない。
身寄りのない彼女のことだ、正直ここで過ごすのが一番だと俺は思う。
しかし勅使河原は掴みどころがないのでいつどこに行ってしまうのか分からない。
握っている手綱が引き千切られないように気にかけておかなければいけない。
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