旭川での任務にも慣れてきた。
ふとした時に、勅使河原美優について考える。
彼女は今元気にしているだろうか。

彼女は月島が不審者だと思い声を掛けて連れてきた女だった。
未来から来たと聞いた時は馬鹿げていると思った。
しかし価値観や文化、一般常識を聞いた時にそれが本当なのだと実感した。

彼女は実に友好的で、英語で言えばフレンドリーだった。
最初の出会いこそ険悪だったが、それ以降はいい関係を築けていたと思う。
勅使河原は英語を教えるのが上手かった。
時は下らない話もして、彼女を知るのが楽しかった。
一緒にいて話をしていると、任務や他の事を忘れられた。
気付けば英語を教わる時間を心待ちにしている自分がいた。
鶴見中尉殿からは勅使河原と良好な関係を築くよう指令を受けていた。
しかしそんなことは関係なく、勅使河原と共に時間を過ごしたいと思うようになっていた。

兄について話をしたとき、彼女は号泣していた。
あまりにも号泣するのでこちらが焦った。
悲しい話を聞くとすぐ泣いてしまうと彼女は言っていた。
そこまで人の悲しみに寄り添うことが出来ることに感銘を受けた。

彼女は一見何も考えていないように見えて、実に聡明だった。
兵士同士の小さな争いがあれば、中立的な立場に立って場を収める姿を何度か見た。
彼女が男所帯のこの兵舎でうまくやれているのは、兵士たちからの信頼があったからだと思う。
誰に対しても気さくに接し、人の話をよく聞いてくれる勅使河原の存在はありがたいものだった。
自分自身を持ち、自分の意見も主張するがお互いが上手くいく方策を見付けようとする姿には、尊敬の念すら憶えた。
彼女は交渉の類が非常に上手かったのだ。

彼女のことが好きなのだと気付いた時にはもう遅かった。
未来から来て、何時消えてしまうかもわからない。
そんな曖昧な存在な彼女のことを知りすぎてしまったのだ。
人間性や行動力、それから尊敬すべき点を見付けすぎてしまった。
彼女と共に過ごしたいという気持ちに嘘はつけなかった。
両家の子女と結婚し、子をなすことが求められていることは理解してる。
頭では理解しているはずなのに、心というのはなんと言うことを聞かないものなのか。



彼女は金塊争奪戦について尾形上等兵から聞いたと言っていた。
きっと奴は彼女を巻き込もうと考えたんだろう。
この話を聞いて、第七師団所属であれば嫌でも巻き込まれざるを得ないのだ。
なるべく彼女には人が死ぬところや殺生の類を見ずに過ごしてほしいのだが、きっとそれは叶わないことなんだろう。
彼女は自分をギャルだと言っていた。
もし彼女が巻きこまれてしまっても、彼女がギャルであり続ける限り未来は暗くないと信じたい。


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