何やら入れ墨の囚人を一人確保したらしく、鯉登はここのところ忙しくしていた。
その日は飛行船?の試運転があるらしく、見たい見たいとごねたら他の軍人と一緒に見に行けることとなった。
やったね!
絶対に危ないことはするなと、鯉登に念を押された。
まさか鯉登にこんなことを言われる日が来るとは…
飛行船?でかい…
私も紐を結ぶぐらいなら出来るので、少しだけお手伝いをする。
凄いですね、とかどれくらい飛ぶんですか、とか近くの軍人に質問してみる。
そうしていると、なんだか建物の方が騒がしい。
何か揉めてるのかな。
三人組が走ってくる。
そのうちの一人に見覚えがった。
不死身くんだ。
撃たれているようで、痛そうだ。
どうしたものか、逃げるなら今だ。
「来い」
脇腹に銃を突きつけられて、腕を取られた。
私はその人にされるがまま飛行船に乗り込んだ。
恐る恐る顔を覗くと見知った顔だった。
「百ちゃん…」
「もう少しこのまま脅されていてくれ」
「第七師団の奴連れて行ってどうすんだよ?!」
「こいつには利用価値がある。人質としても使える」
「えぇ……」
坊主の人が私を見て怪訝そうな顔をした。
ここはまだ黙っていた方がよさそうだ。
もしかしたらこのまま飛行船は飛ばないかもしれないし。
軍人がタワーになって飛行船を止めようとしていた。
ここから飛び降りることはもうできない。
足が折れる、無理だ。
「勅使河原!!!」
呼ばれた方を見ると鯉登が走って来ていた。
銃を捨てて、飛び出した飛行船に追いついた。
「勅使河原をこちらに寄越せ」
「人質を渡す訳にはいかない」
「私の大切な人だ。返してくれ」
「それなら余計返せないな」
百ちゃんが不死身くんに銃剣を渡すと、鯉登が不死身くんに斬りかかった。
鯉登が人を殺そうとしているところを見るのが初めてだったので衝撃を受けた。
忘れかけていたが、鯉登は立派な軍人なのだ。
坊主の男が鯉登を蹴って、鯉登は飛行船から落ちて行った。
「鯉登!!」
木が密集していたところなので生きているとは思うが…
身を乗り出した私の腹に百ちゃんの腕が回っていた。
軍帽を脱いで、髪を解いた。
百ちゃんが私の利用価値を伝えていたのですぐに殺されることはないだろう。
「アシㇼパさん!!」
坊主の男がが垂れ下がっている方を見ると、ㇼパちゃんがそこにはいた。
最初に会った頃より少し大人びていて、成長を感じた。
こんなところで再開できるとは思っていなくて私は嬉しすぎて泣いた。
「ㇼパちゃん!ㇼパちゃん!私だよ!美優だよ!」
「美優!お前!!生きてたのか!!」
引き上げられたㇼパちゃんと抱き合って、再開を喜んだ。
私がビシャビシャに泣いていて、ㇼパちゃんもちょっと泣いていた。
私達以外の三人の頭の上に?が浮いていたので、ㇼパちゃんから説明してもらった。
つっきーに保護される前のことは誰にも言っていなかったので百ちゃんも驚いていた。
私についてもㇼパちゃんから説明してくれた。
私が喋るより、ㇼパちゃんが喋ったほうが納得してくれるだろう。
「え、じゃあ君って未来の女の子ってこと?」
「そうだよ〜。身寄りがないからとりあえず一緒に行ってもいい?」
「…この旅でこの前みたいに人が死んだりするんだよ」
「知ってるよ!でも、もう大丈夫だから。それに私はつるみちゅにとって重要な未来の情報源で、人質としても一級品だと思うよ。だから連れてってくれる?」
「…君がそう言うなら、一緒に来てくれ」
不死身くんが手を差し出してきたので、握手をする。
彼は誠実な人なんだろう。
少ししか出会ってない私のことすら心配している。
それにㇼパちゃんもすごく信頼を寄せているようだ。
私も彼を信頼したいと思う。
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