13
日直の仕事をすると言った由奈を置いて練習をしていた。
もう女バスも練習が始まってしばらくしていたのに由奈は現れなかった。
ふと女バスの方を見ると由奈を至極嫌っていた先輩がいないことに気付いた。
何だか妙に嫌な予感がした。
こういう時の自分の勘は当たる。
でも今は、当たらないでいて欲しい。
「すんません、財布教室に忘れてしもうたんで取ってきますわ」
何故か胸が苦しい。
教室に近付くにつれてその苦しさは強くなっていった。
頼むから、頼むからまだ教室で仕事に苦戦してるアホな由奈の姿を見せてくれ。
全速力で走って、教室を目指した。
その時教室で見た光景を、多分一生忘れることはない。
「今吉、くん…?」
教室の扉を開けると女バスの先輩がいて。
その隣で男達が何かを抑え込んでいた。
先輩が目の前に立ち塞がって来た。
ああ、ワシの勘は当たってしもうたらしい。
「どいてくれます?」
妙に冷静だったことは覚えている。
相手を刺激しないように。
それでいて絶対にこの場を有利に進めるために。
「練習、始まってるでしょ!早く行きなよ!」
「財布忘れてしもうたんですわ。すんませんなぁ」
「そ、そうなんだ!早く取って練習戻りなよ!」
先輩はこの場に相応しくない笑顔を作って言った。
自分が先輩に好かれていることは知っていた。
だからか、だからなのか。
「んんん…!!」
それまで冷静だったはずなのに、涙交じりのその声を聞いて冷静さとかこの場を収めるとかそんなことどうでもよくなった。
「何してくれてんのや!!」
ワシってこないな大きな声だせんねんな。
抑え込んでいた男達を蹴飛ばした。
肋骨とか折ってしもうたかもしれん。
でもまあ、そんなことは後で考えればええな。
男達がどいた先には口から血を流して、制服を乱した由奈がいた。
認めたくなかったが、これを見たら認めざるを得なかった。
「行くで」
由奈を抱きかかえて教室を後にした。
由奈は泣くことすらせずにぼうっとしていた。
「よぉ覚えとけ」
教室に自分の声がやけに響いた。
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