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サトリの言った通りだ。
由奈さんの隣は妙に落ち着く。
木吉の姉貴なだけあって変な奴だ。
「見てこれ。大学のゆるキャラだってー」
「ぶっさいくだな」
「可愛いじゃん…ブサかわ、みたいな…」
「ブサブサだろ」
しゅんとした由奈さんは大学のゆるキャラ商品をそっと棚に戻した。
この女は変に俺に突っ込んで来ない。
俺が木吉の足をぶっ壊した張本人だって知ってんのか?
由奈さんは呑気に購買でやっていた福引を引きに行った。
知らないとしたら、ただの無知な馬鹿な女だ。
「花宮くんー!見て!当たったよ〜!」
「は?何が」
「テーマパークの入場券だって!」
「そうかよ」
アホみたいにヘラヘラ笑って。
バカじゃねぇの。
どうしてか笑っている顔を見ていたくなる。
こいつの隣にいると気が緩む。
ダメだ。
俺が馬鹿になる。
「一緒に行こ〜!」
「は?!何で俺がてめーなんかと行かなきゃいけねぇんだよ」
「……そ、そっか、…ごめん…」
今日一でしょぼんとしてやがる。
由奈さんはしゅん、と視線を下げた。
そして口を結んで入場券を鞄に仕舞った。
「じゃ、じゃあ今吉誘おっかな…」
「………俺が一緒に行ってやるよ」
由奈さんがぱっと俺を見て笑った。
何だか気恥ずかしくなって顔を逸らした。
サトリはこうなることが分かっていたんだろうか。
徐々に由奈さんの隣にいることが当たり前に感じてしまう時が来ることを。
だとしたら俺は相当に嵌められた。
蜘蛛の巣に引っかかったのは誰でもない。
俺自身だ。
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