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「ありがとうね」
「ええんや。気にせんといて」
由奈の手を握ると震えているのが分かった。
下を向いたまま由奈が口を開いた。
「今吉はさ、本当は私のことお荷物だとか思ってるよね?」
「そんな訳ないやん」
「ほ、本当のこと言ってよ。私ホント間抜けだしアホだから、仕方なく世話してくれてるんだよね?」
「そんな訳ないやろ!」
由奈の肩が跳ねたのが分かった。
そんな自分を卑下するようなこと言うのはやめてくれ。
「…あの時言われたんか」
「…」
「そうなんやな」
由奈の目からぶわっと涙が溢れた。
その涙を拭ってやる。
それでも次々に涙が零れてきた。
「ワシは、由奈が思うとる程情に厚い男やない」
「…」
「だから嫌いな奴なんて世話したらんわ」
「…ホントに?」
「ホントや。ワシが由奈に嘘つくと思うてるん?」
由奈が首を横に振った。
それから顔をこちらに向けた。
「あーあ、綺麗な化粧が台無しやで。何年由奈と一緒におると思うとんねん」
「…今吉は罪悪感で一緒にいると思ってたんだ。何となくね」
「……ああ。罪悪感はあるで」
「…やっぱりね」
ああ、知られてしもうたわ。
ここ何年間も隠してきた罪悪感を由奈は知っていたというのか。
由奈の強姦未遂を防げなかったこと。
自分のエゴがそれを招いてしまったこと。
その全てを後悔しているし、それが由奈への罪悪感へ変わっていった。
由奈は悲しそうな顔をしていた。
そんな顔は、見たくなかった。
「でも違うんや!ワシはホンマに、そういうの抜きにして……ずっと由奈の隣にいたいんや」
精一杯だった。
好きだなんて軽々しく言えなかった。
「…本当?」
「…ホントや」
「ホントにホント?」
「ホントや。そうやなかったらこんなとこ一緒に来んわ」
由奈はそれを聞いて、涙を流しながらちょっと笑った。
「ありがとうね」
「何か思う所があったらこれからもちゃんと言うんやで」
「うん!」
ティッシュとハンカチで何とか由奈は泣きやんだ。
それから二人で顔を合わせて笑った。
「これ飲み」
「なにこれ…ん?チョコだ!」
「甘いもん好きやろ?」
「うん。好きだよ」
そんなどうでもいい一言に少しドキッとした。
本当に自分は由奈に弱い。
「化粧直してくる〜!」
そう言ってトイレに駆け込む由奈を見てちょっと笑った。
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