30




「由奈と付き合うことになったわ」
「…あんたらやっと付き合ったのかよ」
「やっとってなんやねん。はい、これ箱根のお土産や」
「……」

花宮は渋々箱根の土産を受け取った。
由奈チョイスのガラス細工。
花宮っぽいと由奈が言っていた。

「翔一〜!」
「うわ、早速名前で呼ばせてんのかよ」
「せや。誰かに取られでもしたらたまらんからなぁ」

あいつアホやから。
そう言うと花宮が鼻で笑った。
由奈が駆け寄って来た。

「花宮くんお土産見た?大切にするんだよ!」
「見てねぇ」
「見てよ!」

由奈が怒って花宮の持っていた袋を強奪した。
中から出てきた深い紫色のガラス細工を太陽に掲げた。

「綺麗でしょ〜」
「せやなぁ」
「…」

それからそれを袋にしまって花宮に手渡した。
花宮が怪訝な顔で見ていた。

「あんたらって意外と似てるよな」
「え…私こんなに性悪じゃないよ…」
「何ショック受けてんねん。ワシかてこんなアホちゃうわ」
「うわ聞いた?彼女にアホって言ったこいつ!」

由奈が怒ってスカートの端をぎゅっと握った。
ホンマどこが似てんのや。
まあ、確かにお互いにちょっと不器用な所は似てるかもしれんなぁ。

「由奈、次の授業一緒に受けようや」
「何で?全然翔一の専門じゃないよ?」
「アホな由奈が他の男についていかんように見とくだけや」
「えぇ?!大丈夫だし!もう行くし!じゃあね花宮くん!」

由奈が怒って行ってしまったのでそれを追いかける。

「ほなまたな、花宮」
「…お幸せに」

花宮がちょっとだけ笑っていた。
だからちょっとだけ笑った。
それから由奈の腕を引っ張った。

「由奈、怒ってるん?」
「当たり前じゃん」
「すまんかったなぁ」

由奈は口をぎゅっと結んでそっぽを向いた。

「私は、翔一が思ってるより翔一のこと好きだし……」

そう言う由奈を見て思わず顔が熱くなる。
由奈のくせにたまに心にくることを言いやがる。

「何言うてんねん、はよ行こや」

手を握るとぎゅっと強く握り返された。
それからもう一度顔を合わせて笑った。
紫陽花が散らばる由奈のスカートが揺れていた。




 

ALICE+