それからは今吉の計らいで花宮くんと今吉と私の三人で過ごすことが増えた。
花宮くんは相変わらずでちょっと苦手だった。
でもそろそろ私は前に進まなくてはいけない。
今吉はその手伝いをしてくれているだけなのだろうけど、少し寂しく感じてしまうのだ。

酒の席というのは苦手だった。
私はアルコールに弱かった。
どうにも理性が仕事をしてくれなくなる。
情動的になるし、いつもの不愛想な私がどこかに行ってしまう。
天井がぼやける。
身体がぐらりと揺れて隣の人の肩に頭を預けた。
あれ、隣誰だっけ。

「懐かれとるなぁ、花宮。よかったやん」
「いや、…急展開についていけねぇ…」

花宮くんだっけ。
そうだったような気もする。

「由奈さん、大丈夫ですか?」
「うん〜大丈夫だよぉ」

大丈夫じゃないよ、私。
早く酔いを醒まそう。
そうじゃないと私が、私が壊れる。

「ここ暑いしちょっと外出ませんか?」

あの時もこんな風に男の先輩に声を掛けられた。
日直の仕事をしていて、ちょっとベランダに出ないかって誘われたんだ。
それで、私バカだから着いて行って。
そうして先輩と話し込んでいたら後ろから、、

「嫌だ。絶対にいや」

今吉以外の男の人と二人きりにはなれない。
怖かった。
あの時私が先輩の誘いに乗らなければ。
あの時男の人と二人きりにならなければ。
あんなことされずに済んだのに。

そう思うとどうにも情動的な自分の目から涙が落ちてしまうのだ。
こんなことで、泣いてちゃダメだ。
分かっているのにどうしても涙は止まってくれないのだ。

「由奈、こっちおいで」

今吉の声がしたから逃げるように今吉の所へ行った。
やっぱり今吉の隣は安心する。
ここ数年間で沁みついたこの安堵感は何物にも代えられないのだ。



 

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