朝起きると、いつもより柔らかい枕と布団に包まれているのが分かった。
でも今日は仕事もないし、このまま寝ていよう。
もうワンナイトラブなんてしないようにしないと。
私は寂しい女ではあるけれど軽い女であってはならないのだ。
あれ、でも待って。
このパジャマ昨日着てたパジャマと違う。

「澪梨〜!!入学式遅れるわよ!!!」

お母さんの声がする。
…何でだ?
私って一人暮らししてなかったっけ…?
違和感を感じて布団から出ると、そこは実家の私の部屋だった。
心なしか背も低くなっている。
…もしかして、タイムリープってヤツ?
それともこれは夢なのか。

「嘘でしょ…」

部屋に置かれた鏡で自分を見ると、中一の頃の自分がいた。
まだ化粧も知らない、純粋だった頃の私だ。

「入学式ってことは、私はまだ12歳…?」

10年以上も戻っている。
夢か?
いや、夢だろ…
頬を抓ったら痛みが走る。
意識もはっきりしている。
まあ、醒めるまで楽しめばいっか…

懐かしの実家にこんな形で帰ることになるとは思わなかった。
懐かしい匂いと心地のいい空気を今は堪能するだけだ。
階段を下りて洗面所に向かった。
顔を洗うとお父さんが制服を持ってきた。
…私の知らない制服だ。

「澪梨が帝光中の生徒だなんて、ホント嬉しいなぁ」

…私は帝光中など通ってはいなかった。
つまり、これはパラレルワールドってヤツなのか。
思わず乾いた笑いが出た。




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