どうやら帝光中学校というのは私の最寄りから電車で少し行った所にあるらしい。
確かに私は中学高校と私立に通ってはいた。
しかしそこは女子校であった。
そしてそのまま女子大に進んだのだ。
私の昔が書き換えられているらしい。
ただ家や澄んでいる場所、街の様子などは特に変わりないようだ。
不思議な気持ちで見知らぬ学校へ向かう。

自分を鏡で見て愕然としたのを思い出した。
髪の毛からお気に入りの匂いはしないし、肌のケアも何もしていなかった。
それに第一、化粧なしで家を出ることに大きな抵抗があった。
だから最低限眉毛を整えて、化粧水をつけて家を出た。
あとなけなしの色付きリップもつけた。
帰ったらお母さんに色々頼もうと強く誓った。

入学式は何だかむず痒い。
中学校の入学式を人生で二度体験するとは思っていなかった。
まあ、これは夢なんだけど…
教室に入ると懐かしい机と椅子が並んでいた。
私の席は一番後ろ。
隣の人はもう来ているようだ。

「初めまして」
「こちらこそ…初めまして」
「私は菅田澪梨、よろしくね。君は…」
「オレは黄瀬亮太っス。よろしく」

金髪が目に入る。
中学で金髪なんて…凄い世界だ。

「綺麗な金髪」
「え、そうッスか?」
「うん。眩しいぐらい」
「そう言われるとちょっと照れるっス…」

黄瀬君はへへっと笑った。
圧倒的に可愛い。
まるで犬だ。

その後黄瀬君と話をして、彼がモデルをしていることを知った。
確かに綺麗な顔だちをしている。
モデルをやっていてもおかしくはないな。
そのうち先生が教室にやって来て、体育館に移動することになった。
先生と言っても私と同年代ぐらいだ…
変な感じ……

生徒代表は赤司征十郎という名前の男の子だった。
彼の髪は赤色でこれはこれで眩しかった。
どうやらこの世界には髪の色が派手な人が割といるらしい。
新入生としての抱負やらを校長が語っていたが興味はなかった。
ただ、何のシャンプーにしようかヘアオイルはちょっと冒険してみようかなんて考えていた。

「話長かったっスね〜」
「そうだね。まあ違うこと考えてたし暇はしなかったな…」
「何考えてたんスか?」
「黄瀬君は犬みたいだな、とか」
「何スかそれ!オレは犬じゃないっス!」
「はは、そういうとこだよ」

私が中学生の時には出来なかった異性との会話というのはこういうものなのか…
その楽しさを噛み締めた。
黄瀬くんとLIMEを交換して、私は両親の元へ向かった。

「疲れたわ」
「入学式なんてそんなもんよ。ほら、写真撮りましょ」
「あ、帰りに駅ビル寄って。欲しいものがある」
「仕方ないわね」

そんな話をしながら入学式と大きく書かれた看板の前に立った。
私、人生やり直してるんだろうか。
それならば、存分にやり直してやろう。
約10年後、あんな虚しい女にならないように。
強い女に私はなるのだ。

お父さんのカメラに向かって微笑む。
太陽が眩しくて仕方がない。




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