イルミが主人公を追い詰める中編ぐらい
気づけば私は、道端で倒れてました。
断片的に覚えていることは、自分が何かから必死に逃げていることだけ。
それ以外の記憶は、すっぽり抜け落ちていた。
運良く親切な老夫婦に救われ、二人が経営する定食屋で衣食住付きで雇ってもらえる事になった。
おじいさんとおばあさんが居なければ、本当に大変だったかもしれない。
何故なら私には、暮らしに必要不可欠な市民コードというものが無かったからだ。
一度警察に引き渡されその事が発覚した。
色々あったが、私が記憶喪失ということもあり、身柄は保留となった。
というか、警察側がめんどくさくなって調査を放棄した様だ。
担当した警察官は、私のことをどうせ“ゴミ捨て場の住人”と言ったが、私にはどういう意味か分からなかった。
ただ、それを聞いた老夫婦が私を見て酷く哀れんでいたということは、いい言葉ではないんだろうなぁ。
飲食店の朝は早い。
7時には開店するが、朝は手軽なモーニングサービスがある為、小さい飲食店ながら、以外と客引きが良い。
その為私の毎日は、朝5時に始まり、着替えを済ませ、6時からは仕込みの手伝いをする。
7時から13時まで接客をし(暇つぶしに集う老人の話し相手も含む)そこから一時間の休憩をとり、14時から18時まで黙々と働いた。
まだ働き始めて一か月程しか経っていないが、ようやく様になってきたかなと思っている。
一か月の終わりに、店主のおじいさんは、私にきちんと給金をくれた。
衣食住を提供してもらうばかりか、まさか給金までなんて、とても受け取れなくて何度も断った。
しかしおじいさんは、この給金は、私がきちんと独立出来るように足がかりにして欲しくて渡しているだけだと説明してくれた。
何時までも私たちは面倒を見きれないからと。
おばあさんは、無理はしないで、独立の目処がたったらでいいからっと言葉をかけてくれた。
二人のさりげない優しさが、暖かかった。
家も家族も、ましてや記憶もない私にとって、おじいさんとおばあさんはかけがけのない家族となった。
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