店に来店して早々、彼はしばらく来れないからっと宣言した。


お仕事ですか?っと聞くと、ちょっと弟が家出しちゃってね、と言いいながら、何かを私に差し出した。



「あの…これは…?」

「プレゼント、開けてみて。」


中を開けると、シンプルな白いケータイがひっそりと箱に収まっていた。


「前に持ってなかったって言ってたでしょ、あげるよ」


「えっ、そんな、こんな高価なもの受け取れません!!」



慌てて箱ごと返そうとするが、ヒョイっと体ごと避けられ全然受け取ってくれない。
困り果てた私はおばあさんにヘルプサインを送った。
ニコニコ笑いながら、おばあさんは言った。


「サナちゃん、せっかく好意で頂いたものを、無下にしちゃ可哀想だわ。」

「そうだよ、サナは俺の好意を受けってくれないのかい?」

「そんな…」



結局サナは二人の圧力に押し負け、有り難く頂戴することにした。


「なんで突然ケータイなんてくれたんですか?」

「多分、一月くらい店に来れないから。
その間にサナに悪い虫がつかないように牽制だよ」

「あら、二人はいつの間に付き合っていたのかしら?」


彼の言葉に茶化すように、おばあさんが横やりを入れてくる。
その言葉に一瞬どきりと胸が高鳴るが、あり得ない妄想に慌てて否定する。
そんなサナをみて、おばあさんはあとはお若いお二人で…と言い残し、店の奥に戻っていった。


ガランとした店内に二人取り残されたが、いつもとは違う雰囲気が、店を包み込む。


「…おばあさんが、ごめんなさい……」


男は顔を赤くして下を向くサナの頭に、手をポンと乗せ、いつもみたいに飄々とした口調で言った。


「もしなんかあったら、電話してよ。すぐに行くから。」

「え、えと、」

「返事ははいしか受け付けないから」



サナの頭から手をのけると、男はじゃあね、っと軽い挨拶で店から出て行った。
男が出て行ってからも、しばらくサナの顔の火照りはとれなかった。









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