断じて恋ではない

東京卍會とか正直どうでもいいけれど、天竺の幹部として、ただやるべきことを果たすだけだ。
モッチーが東卍の三ツ谷とヤり合ってると隊員の一人から連絡が入って、すぐにお兄ちゃん達とその場に向かう。


「あっ。モッチーと三ツ谷はっけーん♡」
「オイモッチー。何一人で楽しんでんだぁ?」


竜胆を後ろからぎゅーって抱きしめながら二人でそう言うと、驚いた顔をしたまま固まっている三ツ谷。ていうか目をまん丸にしている三ツ谷めちゃくちゃかわいいんですけど。レンのセフレになってくんないかなあ。あ、でも敵だから流石に大将に怒られるか。そんなことをぼーっとしながら考えていると、いつの間にか三ツ谷の後ろに蘭ちゃんが立っていて あ… と思った時にはすでに三ツ谷をブロックで殴打していた。うわあ、痛そぉ。ていうか、さっすが蘭ちゃん。仕事早すぎでしょ。


「三ツ谷取ーり!!卑怯だけど許せー」


ドンって倒れこむ三ツ谷の前にしゃがみこんで頭をよしよし撫でてあげる。


「テメェら横からシャシャってきて人の獲物取ってんじゃねーぞコラ!!」
「モッチーうるさ〜い。うるさい男はモテないんだよぉ?」
「あ゛?」
「兄ちゃんはいつもいいとこ取りだよ。ポーズ取るのも嫌い」
「誰がやったとかどうでもよくね?東卍はそんな甘い考えで潰せるチームじゃねぇよ。今まだ油断してっから速攻が大事」
「やーん蘭ちゃんかっこいい〜♡」
「惚れた?」
「惚れたァ♡」
「つーか蓮華いい加減三ツ谷撫でんの辞めろ?コイツ一応敵だかんな」
「え〜竜胆ヤキモチィ?」


上目遣いでそう言ったら呆れたようにため息を吐いた竜胆にぐいっと身体を持ち上げられて、ムーっと頬を膨らませながらそのまま竜胆に抱きつく。


「ハァ、俺の弟と妹が今日もかわいい…」
「ふんっ。ブラコンシスコン野郎め」
「事実だから仕方なくね?」
「……」


「今日中に終わらせんぞ!」
「すぐ仕切る」
「モッチーうるさい」
「まだ何も言ってねぇだろ!?」
「顔がうるさい」
「「ふっ」」
「あ゛?!!?」


こうして、天竺VS東京卍會の戦いの火蓋が切って落とされた。







「春ちゃーんっ♡」


目尻の下がったトロンとした瞳に泣きぼくろの美人。
六本木の灰谷兄妹の末っ子に「わ、綺麗な女の子〜♡同じ天竺メンバーとしてこれからよろしくネッ♡」と声を掛けられて「…男ですけど」と眉間に皺を寄せながら答えたのが、ビッグネームである灰谷妹との初めての会話だった。
言わずもがな、第一印象は最悪。必要以上に関わることは辞めようとそう思っていたはずなのに、何故かあの日から灰谷妹に気に入られてこうやって事あるごとに絡まれてる。迷惑極まりないし、正直言ってかなり鬱陶しい。つか兄貴どもどこ行きやがった?早くコイツも連れてどっか行けや。


「お手っ♡」
「あ゛?」
「だってぇ、春ちゃんわんこじゃん?ムーチョの忠実な犬♡」


ニタニタ、意地悪く笑う灰谷妹にチッと舌打ちをする。灰谷妹とたまに会話して分かったことは、この女は頭のネジが飛んでるイかれた奴だということだ。


「あ?マジで殺すぞゴラ」
「春ちゃんがレンにだけ猫かぶりやめたのちょー嬉しい♡」
「はあ?猫かぶりィ?」
「だってそうじゃん。特にムーチョに対してはさあ。ねえ、なんで猫なんてかぶってんの?もしかしてなんか企んでる?」


体育座りをしながら頬杖をついてそう聞いてきた灰谷妹に、「…別になんも企んでねーよ」そっぽを向きながら答える。こんな信用もクソもねぇ女に本音話すほど俺もバカじゃないんでね。


「ふーーーーん?ま、いいやっ。そーいうめんどくさそうなの、レン全く興味ないし〜


でも、“三途春千夜”には興味あるよぉ?」


蕩けてしまうような甘ったるい声に、蜜のように男を誘う甘い匂い。おまけにスタイル抜群で、とびっきりの美人。この女に大して興味はねーけど、さぞかしモテるだろうなあ、とは思う。
灰谷兄妹はその実力は勿論のこと、兄妹全員が容姿端麗なのもカリスマ不良と呼ばれる要因の一つだと聞いたことがあるけれど、現在進行形で納得してしまっている自分がいる。至って単純なことだ。男はいつの時代も、美人に弱い。


俺のトレードマークでもある黒のマスクをそっと外されて、それを合図にお互い引き寄せられるようにキスをする。


「んっ…はぁ、はるちゃぁんっ…」
「はっ、なんだよ、」
「春ちゃんの、舐めさせて?」


首に腕を回されて、熱を孕んだ瞳で見つめられながら股の間にそっと手を置かれ、もうすでに反応しかけている俺のモノをいやらしく撫でるその中学生とは思えぬ色気にゴクリと喉仏が上下に動く。
灰谷妹はビッチだと風の噂で聞いたことはあるけど、この感じだとその噂は本当だろうな。


「はっ…俺以外の男にもこうやって誘惑してんのかァ?」
「ん〜?なぁに、春ちゃん。嫉妬ォ?」
「あ゛?ンなわけねーだろ」


ハッと鼻で笑いながらそう言えば、ふーんとどこかつまらなそうにそう言った灰谷妹が天竺の特服のズボンに手をかける。


「ねえ?春ちゃーん」


ふと思った。コイツの間延びした喋り方は、兄である灰谷蘭によく似ている。


「フェラして30秒以内にイったら、これからレンのこと“灰谷妹”じゃなくてちゃんと名前で呼んでくれる?」


予想外の言葉に、思わず目をパチクリさせる。まさかコイツの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったからだ。確かに俺は今まで、コイツのことを名前で呼んだことはない。名前を知らないんじゃなくて、わざわざ名前呼びにする必要性を感じなかったからだ。もしかして、コイツは今までずっと俺に名前で呼ばれたかったのだろうか。そう思うと今まで興味がなかった目の前の女が、ほんの少しだけ、かわいらしく思えてしまう。


「…別にいいけどよォ。果たしてオマエにそれだけのテクがあんのかねェ」
「お兄ちゃん達レンのフェラで秒でイくよ。いっつも上手だねって褒めてくれるの〜」
「……」


いやマジかよ。灰谷兄妹が重度のシスコンブラコンなのは周知の事実だが、妹が兄にフェラってばりっばりの近親相姦じゃねーか。ドン引きしている俺に反して、やけに楽しげなコイツに小さなため息を零す。やっぱりコイツは頭がおかしい。それは兄貴共も然り。


「腰、ちょっと浮かして」
「ン」
「ありがとぉ。ふふ、もうちょっと大きくなってる」


愛おしそうにそう言ってちゅう、とボクサーパンツの上からキスを落とされる。しばらくちゅ、ちゅ、と何度も布越しにキスをされたり形を確かめるように舐め上げられたりすると、我慢汁がじんわりと先端から滲み出し、いつの間にかグレーのボクサーパンツには大きな染みができている。
我慢汁すごいねぇと上目遣いで見つめられながらクスクスと笑われて、「うっせぇ、早くしゃぶれよ」下唇を噛んでそう吐き捨てると、え〜?なんて髪を片耳にかけながらフーッと息を布越しのモノに吹きかけられる。快楽がもどかしくてたまらない。早く直でちんこをしゃぶって思いっきり吸って舐めてほしい。散々焦らされまくって、もう余裕なんてものは皆無だ。


「ふふ。春ちゃんはえっちだねえ」


どっちがだよ。ボクサーパンツをずらされると、待ちわびたかのように腹につきそうなくらいそそり立ったちんこがぶるんと飛び出す。
布越しにされていたみたいにちゅっと先端にキスをされると、次の瞬間生暖かい粘膜に包み込まれて待ちわびた快楽に思わず「あっ…」と自分の声ではないような甘い喘ぎ声が漏れてしまう。


「んんっ、はるひゃんのっ、おっひぃ…っ」
「っくそっ、そこでしゃべんなっ…」
「かんひひゃう?」
「うっせ…んっ、はぁっ、それやば、きもち…っ」


睾丸から亀頭に向かってねっとりとなぞるように舐め上げられて、俺の一番弱いカリをなぞるように舐められたり強く吸い付かれると太腿がビクッとなって腰がガクガクするくらい気持ちがいい。


「あっ…それダメっ…やべえってっ…」
「んふっ、はるひゃん、カリすきだねえ?」
「あ゛っ」


カリを攻められながら睾丸を手のひらで包み込まれて優しく揉まれると、射精感が一気に込み上げてくる。頭を掴んで「もっ、でる、から」と離そうとするけれど、コイツは口を離すどころか更に奥までちんこを咥えると喉仏を強く締め上げてじゅぽじゅぽと下品な音を立てながら頭を上下に動かしはじめる。あまりの快楽に頭がバカになりそうだ。


「あ゛っ!?それヤバッ、でるっ、マジでイくっ、からぁ…!」
「ひっていいよ?ひっひゃえ♡」
「っ、ああっ、でるでるでるっ…!イッ…クッッ!!」


身体がぶるっと痙攣して、どぴゅっどぴゅっと精液が口内に吐き出される。


「はあっ、はあっ、まだ、でてるぅ…」
「すごぉ…ひっぱいでるねえ」
「んんっ…はあ、おまっ…だせよ、」
「なんでぇ?おいひいよぉ?」
「…そんなうまいもんじゃ、ねーだろっ」
「ん〜?でももう全部飲んじゃったあ。めちゃくちゃ濃くて美味しかったよ?ご馳走さま♡」


舌をベーっと出されながらそう言われると何とも言えない気持ちになって、ふいっと顔をそらしながらティッシュで適当にちんこを拭く。そしたら「ねえねえ春ちゃーん。これからは約束通りちゃんとレンのこと名前で呼んでね?」上機嫌そうな声が耳元で聞こえてきて、グッと眉間に皺を寄せる。


「…そもそもオマエが散々焦らすからだろっ!」
「だとしても30秒以内にイった事実は変わりませーん」
「クソムカつくな!!!」
「ハイハイ。なんとでもどーぞ。約束は約束だもん」


へへんっと満足気な顔をしているコイツは、出会ってからはじめて年相応に見える気がする。まあ、いつもは悪い意味で大人びてるからな。はあ、とため息を吐いて髪をくしゃりと掻き上げる。そして「……蓮華」ポツリと独り言のように呟いた。


「…え?もう一回呼んで?」
「あ゛?なんでだよっ!今言っただろ!」
「小さすぎて全然聞こえなかったんだもん!お願い!もう一回言ってよ!」
「…ああもうっ!蓮華っ!」
「…ふふ。はぁーい!春ちゃんっ!」


なにがそんなに嬉しいんだよ。あのビックネームの灰谷の末っ子が、たかが名前呼ばれたくれーでニコニコと嬉しそうにしやがって。春ちゃん春ちゃんっ!と本当に幸せそうな顔で腕を組んでくるコイツのことが、鬱陶しいと思いつつもそれ以上にかわいいなんて思ってしまっている自分がいる。いやマジありえねーって…。


「春ちゃぁん。今度はエッチしようね♡」


吐息を吹きかけるように耳元でそう囁かれて、さっき射精したばっかなのにまた勃起しそうになったのは決して俺のせいじゃない。コイツがエロすぎるの悪いと思う。断じてこれは、恋なんかではない。












「あっ!灰谷、兄貴達がオマエのこと探してたぞ」
「…りょーかぁい。(カクちゃん顔真っ赤だけど絶対さっきの見てたな。わかりやすっ)」