◎「不機嫌なお姫様」の後日談
(交際後の話です。五清はまだ1年生)
バーーーンと扉が吹き飛び煙が立ち上がる。
何事!?と慌てて視線を向ければそこには青筋を立てて殺気を滲ませている悟がいてダラダラと嫌な汗が頬を伝う。
「お久しぶりです♡神崎先輩♡」
絶対零度の空気を纏っている悟の後ろからひょっこりと顔を出したのは、以前私がその…ちょっとイライラしてちょっかいをかけた後輩の清宮希で。やっぱりか、と顔が引き攣る。
でもさあ!仕方ないと思わない!?
セフレだとは言え何度も身体の関係を重ねてきた悟にあんなにいきなりばっさり切られたら、そりゃあ悟のお気に入りの清宮さんに八つ当たりもしたくなるわよ!!
だけど私はその時知らなかった。
清宮希がどれほどヤバい奴で、悟がどれほど清宮希のことを大事にしているのか。
同期の歌姫にそのことを話したらお前死んだなみたいな哀れんだ瞳を向けられたのも今なら理解できる。
「ひ、久しぶり…清宮さん…と…悟」
必死に絞りだした声は思ったよりか細くて震えている。悟の名前を呼んだ瞬間、ついさっきまでニコニコしていた(但し目は笑っていない)清宮さんの表情がスゥと消え去っていく。思わずヒィッと椅子から転げ落ちると、清宮さんはその長い足で一気に距離を詰めて、ぐいっと顔を覗き込んでくる。
「調子のんなよ。殺すぞ」
「…っ」
「希。希ちゃーん。少し落ち着こう?ね?」
「は?何?悟は私よりこのブス庇うわけ?」
「(ブス⁉⁉)」
「なわけねーだろ。今すぐ殺してやりたいくらいなのに」
「えっ」
「えって何お前びっくりしてんの?つーか俺の大事な希傷付けといてまさかタダで済むと思ってたワケ?その無駄にでかい頭につまってる脳みそ空っぽなの?引き摺り出して確かめてやろうか」
「ヒッ……」
あまりの恐怖にガタガタと震えだす身体。
怖い怖い怖い怖い怖い。この人は本当にあの悟なの?
このままだと本気でコイツらに殺される…!必死に頭の中で助かる方法を考える。誰か…歌姫は任務中だから…そうだ、先生!!もうすぐ授業が始まるから、先生が来るはずだわ!そしたら間違いなく私を助けてくれる!ホッとしたのもつかの間、清宮さんが「あー!そういえば」と近くにあった椅子に座ってその長い足を組んだ。
「担任、来ないですよ」
「えっ…な、なんで」
「傑と硝子が、貴女の担任に聞きたいことがあるみたいで。しばらくここには来ないんじゃないかなあ」
ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべる清宮さんと悟に、1年全員がグルであると悟った。
こんなことになるなら、あの時清宮さんに絡まなければ良かった…そんなことを後悔しても、もう遅い。一つ上の先輩が言っていた。「清宮希。あの女だけは、敵にするな」という言葉が今さら頭の中でエコーする。
「おいブス」
「わ、わたし…っ?」
「はあ?お前以外に誰がいるんだよバカなの?」
眉間に皺を寄せた悟に思いっきり蹴り飛ばされて、バンっ!!と大きな音を立てて壁に打ち付けられる。「い゛っ…」とあまりの痛みで悶えている私に悟はケタケタ笑いながら近づいてくる。
「俺と希さあ、付き合ってんの」
「……ぇ、……」
「お前一応高専の生徒だし殺すと色々めんどーだから今回はこの程度で済ましてやる。ただ、次もし俺の彼女を傷付けることがあったら、その時はーー」
「“事故”に遭って死んでもらうから、気をつけてね?」
頭の中で警鐘が鳴り響く。
バクバクと煩いくらい心臓が脈打って、恐怖と痛みで呼吸が上手くできなくて苦しい。
そんな私を冷めた目で見下ろす悟の後ろで、清宮さんは口角を釣り上げながらその美しい唇を動かした。
“ ざ ま あ み ろ ”
もう二度と、貴女を傷付けることは致しません。
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アンケートより参加に*
希ちゃんは死ぬほど執念深いと思う。
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