「はじめまして。清宮希です」


第一印象は“俺レベルの顔面にはじめて出会った”。
次にすぐに思ったのは、これはまあ自分でもなかなか最低だと思うけど“乳でかっ”だった。
うん。仕方ないよな。健全な10代男子なんてみんなこんなもんだし。


同級生の清宮希は正直に言って、俺のどストライクだった。
まず顔が好み。超絶タイプ。
透き通るような色素の薄い金色のサラサラのロングヘアーに、クリクリの大きな目の中に一際輝く、ヘーゼル色の美しい瞳。それを縁取るくるんとしたふわふわの睫毛。小さい鼻には鼻筋が通っていて、薄桃色の唇はぷるんとしていて思わずかぶりつきたくなってしまうほど。それらが全てその小さすぎる顔に絶妙なバランスで収まっていて、肌は雪の様に真っ白だった。

これだけ美しいのに、神様はまだ彼女に与え足りなかったらしい。

まず乳がでかい。うん。これ俺の中じゃかなり大事な部分だから何度でも言うわ。
制服越しに見ても分かる、圧倒的なおっぱいの存在感。
六眼でなんとかして透けて見えないか?なんて本気で思ってあいつの胸の部分をガン見してたら傑に思いっきりチョップ食らってそこから壮絶な喧嘩に発展したのは記憶に新しい。
クソ、自分は何も興味ありませんみたいなすました顔しやがって。お前のお気に入りのAVが引くほどえげつねえの俺知ってるんだからな。このむっつりスケベめ。

そしてスタイルが良い。制服はカスタマイズされていて、お腹辺りにはコルセットが巻かれていて、ぴったりとしたスカートはやけに短い。そこから伸びる脚はすらっと長くて、ニーハイを着用している。うん。絶対領域。最高。鼻血。

顔だけでも食っていけそうな上に乳はグラビア、スタイルはモデル顔負けってヤバくない?




まあ前置きが長くなったけど、つまり何が言いたいかというと俺は希に一目惚れをしていた。
生まれてはじめての経験で、自分でも少し驚いたくらいだ。
だって、俺自身が類い稀なる美貌の持ち主なのに、そんな俺が他人の容姿に一目見て惹かれるなんて一体誰が想像する?


「はーーー…やばい…今日も希が超絶可愛い…」
「悟。見過ぎ」


硝子と顔を寄せ合って雑誌を読んでる希をうっとりしながら見つめていると、傑に呆れた目で見られた。


「なあ希って彼氏とかいるのかな?まあいたとしても奪うまでだけど」
「希今まで一度も彼氏できたことないって言ってたよ」
「へえやっぱり…………………………………は?」


まじで?思わず目をぱちくりさせる。
いや、流石にそれは嘘だろ。あれだけ美人で今まで彼氏いないとかありえる?それとも理想が高すぎるとか?あ、それならあり得る気がするわ。つか、


「なんでお前がそんなこと知ってんの?」
「普通に彼氏いるのか聞いたら今まで彼氏いたことないって言われたから」
「は?お前なにちゃっかりそんなこと聞いてんの?まさか希のこと好きなわけ?」
「恋愛対象としての好きなら、ないな。希はなんか綺麗すぎてそういう対象として見れない」
「え、なに、傑ってビーセンだったの?」
「いや可愛いに越したことはないけど…希ほど美人だと、高嶺の花みたいな感じがする」
「ふーん。ま、それなら良いけど。俺は希狙いだから邪魔すんなよ」
「セフレいるくせによく言うよ」
「傑くんにだけは言われたくないなあ」





「希って今まで彼氏いたことないってマジ?」
「うんほんとだよ。傑から聞いたの?」
「うん」
「おしゃべりだなあ」
「もしかして知られたくなかった?」
「ううん。別にそういうのじゃないけど」


今日は傑と硝子が任務に行っていて、教室には俺と希の2人きり。黒板にはでかでかと書かれた[自習]の文字。よし。チャンス到来。
元々不真面目な希は教卓に置いてあるプリントを無視してさっきからずっと携帯をカコカコいじっている。
伏せられた睫毛がふわふわ揺れているのをついつい見入ってしまう。
これだけ綺麗な顔をしているのに、俺と同じ1級術師で、ヘビースモーカーで、酒が強くて、時より淋しげな瞳をしている、掴み所がない女の子。もっと、もっともっと、希のことを、知りたい。


ゆっくりと伏せられていた瞼が上がって、綺麗なヘーゼル色の瞳が俺の瞳を写し出す。
希は俺の頬を両手で挟むと、ふわりと微笑んだ。


「み す ぎ」


ブワッと身体中が沸騰したかのように熱くなる。
心臓がバクバク煩いくらい脈打って、まるで吸い込まれるように、希から目を離せなくなる。
こんな感情、生まれて初めてだ。


「好き」
「え」
「希のことが好き」
「ふふ。ありがとう」
「希は俺のこと、好き?」
「うん。大好き」


え、じゃあ俺達両想いってこと??やばい、めちゃくちゃ嬉しい。泣きそうなくらい、嬉しい。
俺の頬を挟んでいるその小さな手をそっと外して、その薄桃色の唇にキスをする。
ちゅ、とわざとらしくリップ音を立てて唇を離すと、目の前にはきょとんとしている希の顔。


「…さとるとちゅーしちゃった」
「うん。希のファーストキス奪っちゃった」
「はじめてのちゅーが悟とかあ」
「なにその反応。嫌だった?」
「ううん。悟のこと大好きだから嬉しい」


ふにゃりと顔を緩ませてそんな可愛いことを言うもんだから、俺の胸のときめきと下半身はもう限界寸前だった。


「なあ、俺ら付き合うってことでいいよね?」
「え?それはやだ」
「はーーー!?!!!なんでだよ!?!!?」


思わずガタンと椅子から立ち上がると、その衝撃で椅子が倒れ落ちる。


「うわびっくりした〜」
「びっくりしたのはこっちだわ!お互い好きでキスまでして付き合わないってどういうことだよ!」
「え、悟は私と付き合いたいの?」
「いやおまっ…嘘だろ」


思わず頭を抱え込むと、希は可笑しそうにケラケラ笑って、俺ははー…と深いため息を吐く。


「悟はかわいいねえ」
「絶対俺の彼女にするから覚悟しとけよ」
「はーい楽しみにしとく」
「適当すぎんだろ」


俺の産まれて初めての告白はこうして撃沈した。
だけどそれが逆に俺に火をつけてそれから何度も何度も懲りずに希に告白し続けたけど返事は変わらずNOで、その光景を傑と硝子が呆れた顔をしながら見てるのがもはや日常化としていた。








「希」
「んー?なあに、悟」
「好き」


希の部屋で後ろから抱きしめながら耳元で囁くようにそう言えば、希はクスクス笑いながら「私も好きだよ」と甘ったるい声で呟く。
そのままなんとなくムラムラして部屋着の中に手を突っ込んでブラの上からその豊満なおっぱいを揉んでみると、そのあまりの柔らかさに下半身がぐっと熱くなるのが分かった。つかやっぱデケェな…。
つい夢中になってしばらく揉んでると、希が「悟くんはおっぱい好きだねー」なんてケラケラ笑いながら言ってきて、俺はハッと正気になる。
いやいやいや待て、おかしいだろ。


「お前怒らねえの?」
「え、怒る?なにを?」
「彼氏でもないやつに胸揉まれて」


もう何度も希にキスして今現在進行形でおっぱい揉んでる俺が今更なに言ってんだって思れるかもしれないけど、流石にこれは希の貞操観念が心配になる。
俺じゃないやつにこんなことされてもこいつは平然としていられるのだろうか?そうだとしたら心配を通り越していっそ怒りさえ湧いてくる。


「悟だからいいんだよ」
「は、」
「悟は、私の特別だから」


顔だけ後ろに向けて俺に微笑む希に、噛み付くようなキスをした。



まるで恋人同士のように、好きだと言い合って甘いキスもするし、胸だって揉ませてくれるのに。

俺のことを特別だと愛おしい目で言ってくれるのに。

どうしてお前は、俺のモノになってくれないの?


「じゃあ、俺と付き合って」


そう言えば、希は困ったように眉を下げて、胸がキュッと締め付けられて苦しくなる。
こんな感情を、俺は希に出会うまで知らなかった。


「愛してる」


希の全てが欲しくて、俺だけを見て欲しくて、俺は時より、どうしようもないくらい切なくなって、泣きたくなる時があるんだ。


「私も愛してる」


じゃあ早く俺のモノになってよ。
そしたら俺の一生をかけて、お前を愛し抜くと誓うから。