“清宮希”


僕が担任を受け持つ4人いる一年生のうちの1人で、一年ですでに階級は1級、特級に最も近いと言われているほど規格外の強さを誇る。
おまけに容姿端麗。性格は少しきついところもあるけど、根っこの部分は優しい、言わば非の打ち所がない完璧な生徒だ。







「恵の童貞、私が貰ってあげる」


窓から夕陽が差し込む教室で、押し倒されている恵に跨る希を、僕は立ち竦みながら眺めている。
希の手はあろうことか恵の股の間にあって、恵は目を見開いて希のことを凝視している。


「誰が童貞だよ」
「恵って絶対童貞でしょ」
「……チッ」
「ふふ。図星だ」


かあわい、うっとりしながらそう言って恵にキスをしようとした希に流石に焦って駆け寄って咄嗟に両手で制する。
恵は「は?」と嫌悪そうな顔をしながら僕を見て、希はにんやりと口角を釣り上げながら僕を見上げる。


「不純異性交遊」
「アンタいつからそこにいたんですか」
「恵!!僕は悲しい!悲しいよ!!君をそんな風に育てた覚えはありません!!」
「はあ?そもそもアンタに育てられた覚えはありませんよ。てか俺は被害者です。コイツにいきなり押し倒されたんで」


そう言って眉間に皺を寄せながらピシッと希を指差す恵に、希はわざとらしく肩をすくめてため息を吐き出す。


「はあ…女の子に罪をなすりつけるなんて…これだから童貞は」
「あ?つかさっきから童貞童貞うるせーよ」
「事実だから別に問題ないでしょ?」


その会話中も未だに身体を密着させている2人に、ピキピキと青筋が浮かんでくる。この2人が何だかんだ仲良しなのは周知の事実だが、この距離感は流石にただの同級生の域を超えている。
つかコイツらいつまでくっついてんの?


「はいはい。仲良しなのはケッコーだけど、そろそろ離れましょうね〜」


バッと無理矢理身体を引き離すと、恵は大きなため息を吐いて頭をガシガシかいて気まずそうに立ち上がると「じゃ、俺は部屋に戻ります」と扉の方に足を進める。


「恵」
「……」
「いつでも童貞もらってあげるからね」
「うるせーよ」


ガラガラと扉が閉じて、部屋には僕と希の2人きり。
希はスッと立ち上がると、僕にぎゅうっと抱きついてくる。


「先生。嫉妬した?」
「死ぬほど嫉妬した。危うく恵半殺しにするとこだった」
「えーこわあー」


クスクス笑う希はそのまま僕の胸にスリスリと顔を擦り付けてきて、そのあまりのかわいさに危うく絆されるとこだったけど、いかんいかんと僕のなけなしの理性が働く。


「僕というナイスガイな彼氏がいながら浮気なんて、希ちゃんは酷い彼女だな〜」


希の頭を鷲掴みにしながらそう言えば、希はむーと不満気に口を尖らせる。


「…補助監督に告白されてた」
「え?アレ見てたの?」
「めちゃくちゃ笑ってた。むかつく。死ね」


あー…そういう。つまり希は補助監督に告白されてる場面を目撃して、嫉妬して仕返しのために恵を襲おうとしたわけか。


「んー?ふふ。なんで僕が笑ってたか分かる?」
「知らない。結構美人だったから?私のが百億倍美人だけど!」
「残念だけど不正解。僕には世界で一番かわいくて愛してる彼女がいるからその告白には応えられませんって断ったから。笑ってたのはきっと、その時オマエの顔思い浮かべたからじゃん?」


そう言ってちゅう、とその薄桃色の唇に吸い付くと、希は一瞬キョトンとして、そして嬉しそうにくしゃりと笑う。


「先生。大好き」
「2人きりの時は先生じゃないでしょ?」
「さとる、」
「ん」
「さとる、大好き」
「ちゃんと愛してるって言って、希」


ちゅ、ちゅ、と啄むような口付けを交わしながら希の胸元に手を当てると、希はニヤリと口角を釣り上げて僕を見上げる。


「恵を押し倒した時、顔真っ赤にしてたの。かわいかったなあ」
「は?」
「ちょっとアソコも大きくなってたから、澄ました顔しながら私に興奮してたのかなあ?かわいいよね〜」
「あ゛?」
「悟が来なかったら、ほんとに恵の童貞もらってたかも♡」


ドンっと希の顔の横をすり抜けて壁をぶん殴ると、怒りで力の制御ができずに爆発音と共に大きな穴が空いて希は面白そうにクスクス笑う。


「ふふ。しーらないっ。また学長に叱られるよぉ?」
「あ?んなの知らねーよ」
「口調」
「うっせー。まじ腹立つ。ぜってー泣かす」
「先生〜恵ってどんなセックスするのかなあ?優しくねっとり?それとも激しく?」
「オマエさあ、僕という彼氏がいるのに同級生のちんこ触るはキスしようとするわなんなの?なんなわけ?俺に抱き潰されてーの?」
「悟の目の前で恵とセックスしたら、めちゃくちゃ嫉妬する?」
「嫉妬するね。もしかしたら本気で恵のこと殺しちゃうかも」
「ふふ。嫉妬して余裕ないさとる、かわいい。大好き」
「希ちゃん?男をバカにしたらどうなるか分からせてやるよ」
「ん、私に分からせて?先生」



“清宮希”

僕が担任を受け持つ4人いる一年生のうちの1人で、一年ですでに階級は1級、特級に最も近いと言われているほど規格外の強さを誇る。
おまけに容姿端麗。性格は少しきついところもあるけど、根っこの部分は優しい、言わば非の打ち所がない完璧な生徒だ。

そして、生意気でエロくて甘え上手で小悪魔で嫉妬深くて僕のことが大好きでたまらない、
世界一かわいくて愛してる、僕の自慢の彼女。
手出したら殺すよ。コイツ、僕のだから。