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観劇後、そめみんこと染谷に楽屋に顔を出して!、と言われていたことを思い出して、萎縮しながら楽屋に向かう。前回来たとき顔を出さずに帰ったことを根に持っていたのか、相当念押しされた。

楽屋への廊下を歩きながら考える。

座長染谷は、なんというか、いつもラジオで一緒にバカやってるヤツだと思えないくらい堂々としていて、本当にかっこよかった。

そして瑞希。
あいつとはそれなりにいろんな現場で一緒になっているがあんなに子供みたいにイキイキした目をするとは。舞台を見にくるたびそう思う。なんだか慣れないのだ。いっつもローテンションのあいつが。まるで違う人物みたいで。


「しらいむ!」

呼ばれた声に顔を上げると染谷が来てくれてありがとう!と顔を輝かせた。
超よかった、と語彙もくそもない感想をいうと染谷は安心したように笑った。相変わらず綺麗な顔だ。


瑞希!お前に客!と楽屋の中に向かって叫ぶ染谷。それに対する返事は「まだ着替え中!」だった。
楽しそうな声だった。あいつはこっちの世界だとそうやって笑うのか。いつもと違うように感じる、少し幼い彼女の声。

「瑞希って、いつもあんなん?」
「あんなんって?」
「普段楽しそうに声を張るのって珍しいなって思って」


「一度焦がれた夢ってさ、そんなにすっぱり諦められるものじゃないんだとおもうんだよね」

舞台に立つ瑞希は、間違いなくその場所に焦がれた目をしていた。

かといって、声優という仕事を嫌々やってるとか、そういうわけじゃない。マイクの前に立つ彼女は間違いなく役者として輝いてる。堂々と誇りを持って、立っている。

ただきっとその覚悟で自分を追い詰めてしまったりしているのかもしれない。

染谷曰く、瑞希は知り合いを呼ぼうとしないらしい。この舞台も例外ではなく。
勿体無いなあと思う反面、きっとこれは彼女にとって夢の場所であって息抜きの場なのだろうな、なんて少しだけ得体の知れない久保瑞希という人間の奥底が見えたような気になってしまう。


それでもやっぱり俺は、声優をやっている彼女をずっと見てきたから、それがいちばんかっこいいと思うし、輝いてるように見える。


芯の通った声が、まっすぐな彼女の生き方のようで、かっこいいと思う。


「俺は、この舞台この座組みが、瑞希が帰ってこれる場所であれて、ここを守れて本当に良かったって思ってるんだ。」

「それが、今回の座長染谷の強さか」

「はは、そうかもしんない」



「おまたせしました、って、なんだ!白井さん!」
「お前は!ほんとに!!」
「ど、どうしたんです、染谷さんも笑ってないで!」

白井さん〜可愛い後輩を紹介させてください〜、と笑う彼女は無邪気で、本当にいい顔をしていた。