■ ■ ■
「あれ、江口さん、今日瑞希は?」
「トイレいくっつって消えた。直ぐ帰ってくると思うよ」
「消えた」
最近よくSolidSの仕事で一緒になる。
その度に一緒に来る2人を微笑ましく思い、からかうのはもはやお約束だ。
普段仕事場では江口さんと絶妙な距離を保っている瑞希ちゃんが、SolidSの仕事の時は心なしか警戒を解いているのか江口さんとの距離が近いのも、今ではいいからかいポイント。
「久保の舞台、みにいくんすか?」
「ああ、そうじゃん、今やってんだっけ」
「白井が昨日なぜか俺に感想送ってきたから、江口さんもいくのかなって思って」
「それがびっくりするぐらい仕事が被って行けないんだよね」
瑞希ちゃんの舞台。そういえば観に行ったことがない。それなりに長い付き合いだけど、本人が出てる舞台を客として観たことは一度もない気がする。
瑞希ちゃんのことだから「見にこないでください」とか言ったんだろうか。それはさすがにないか。
でも江口さんですら呼ばないのか。なんか意外だ。
「瑞希ちゃん、あんま自分の舞台に俺ら呼びたがらないよね」
「呼ばないね〜、たしかに」
「なんか緊張すんだってさ、客席に身内がいるの」
「へ〜そうなんだ」
「花江くんも知らんかったんだ」
「全然知らなかった」
「なんか今迄瑞希のことは花江くんが大体把握してるみたいなのが普通だったからなんか不思議」
「まあこれでも瑞希の彼氏だしね〜」
「これでも!」