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「おまえ、結婚しますっていったらおめでとうっていってもらえそうだよな」
「結婚しねえの?」

「今の所はまったく」


現場の人たちのからかいにそう苦笑いする彼女。へらりと交わす声には、少し上擦った作り笑いがにじむ。
同棲までしてる彼氏がいる、人気声優。
最近トレンドの結婚というワード。
そりゃあみんな気になるんだろう。有名税。仕方ない、と彼女は笑っていた。





「花江くん、誕生日おめでと」

いつものテンション、いつものトーンでも、彼女からのおめでとうは、立派なおめでとうだ。
誰もが言う、低くて、感情がわかりづらいローテーションぶり。

最近思う。

このテンション、このトーンで話してくれるのは今ではもうある一定層の特権だって。


「花江くんは聞かないのな」

「聞かなくても江口さん観てればわかるし」

「そんなもん?」

「そんなもんだよ。それに瑞希ちゃんはわかりやすいしね」

「そう言うの、花江くんくらいだよ」

「江口さんより?」

「さあ、どうだろう」


悪戯っぽく口角を上げた彼女をみて、今日はよく表情が変わるなって。


「プレゼントは?」

「なにがいい?うーん、なにも用意してなかったんだけど」

「そうだなあ。惚気話以外なら」

「じゃあ昔懐かしい、貧乏エピソードをつまみに酒を飲みません?おごるよ」

「いいね」

じゃあ明日ね、なんてさらりと誕生日の次の日を指定してくるのはきっと男前な彼女の気遣いで。

俺が彼女にしてあげられることは、かわらず隣にいてあげることだ、なーんてカッコつけたところで彼女には到底勝てっこないんだって、そんなの出会った時から知ってる。