■ ■ ■

「瑞希〜水、これが瑞希のって」
「ありがと、」

肩を叩けば、我に返ったように勢いよく振り向いてくれた。

彼女が食い入るように観ているモニターを覗き見ると、舞台では江口さんがソロ曲の調整をしている。念願のスケパ。調整にも気合が入る。

「江口さんが仕事してるとこ、久しぶりに見たなって」

惚気か?といじる前に彼女の目があまりにも真剣で、思わず言葉を飲んでしまった。


「かっこいいなあ」






「気合が違うな」

突然隣に立っていた江口さんがそう呟くから、その目線の先を追うと瑞希ちゃんの姿。

「男の中でこれだけ見劣りせず自分のパフォーマンスできるってすげえな」

「瑞希ちゃんは憑依型だからねえ」

スイッチが入るとまるで役に取り憑かれたように、別人になるのだ。時々それが怖いと思うくらい。今回のライブでもそれは遺憾無く発揮されていて。

「いつみても、かっこいいよなあ」

譫言のように江口さんの口から溢れた言葉に、思わず顔が緩んだ。







「無意識にもほどがあるよね」

スケパ終演後。冷めない熱が燻る身体に冷たいビールを流し込む。
壮馬くんがジョッキを片手に本番前に見かけた瑞希ちゃんのことを愚痴るように報告する。

「でも今日のステージはもう江口さんと瑞希ちゃんの気合が全然違ってた」
「なんか、恋人である以前にお互いのこと認めてるってすごいな」
「それが無意識だから余計にね」

手元の唐揚げをつまみながら梅ちゃんが頷く。

「瑞希ちゃんに至っては恋する乙女みたいだね」
「初めてかわいいっておもったわ、めっちゃ悔しいけど!」

そんな2人は打ち上げを早々に切り上げて仲良く帰っていった。半年前はまだちょっとギクシャクしてたのに。
ちゃんと恋人同士じゃんね。少しホッとした。