■ ■ ■
「どこの肉食べに行く?」
「タンかな」
「え〜タンかあ」
前を歩く2人の会話がおかしい。
いや、おかしくないのか?だれも突っ込まない。俺がおかしいと思ってるだけなのだろうか。
全く自然の流れだった。
仕事が終わって、帰ろうというこのタイミング。
なんで肉の前提なんだ?
肉は決定事項なのか?
どこの肉、に対して店の場所じゃなくて部位を答えるのが正解なのか?
いや、100歩譲ってこの前を率先して歩くお肉ボーイはわかる。こいつはいつものことだ。でもまさかその隣の瑞希さんまで。考えるのも面倒なほど疲れてるのか?
はたまたこの二人の中では暗黙の了解なのか?
「山谷くん百面相してどうしたの」
振り返った瑞希さんが不思議そうに顔色を伺う。
「ああ、そうか。山下くんのペースに飲まれちゃったね。じゃあ寿司にしよう。夏だし」
「え〜!瑞希ちゃん!」
「今日お昼も肉だったじゃん、山下くん」
「たしかに!」
いや、なぜそこも寿司で固定なんだ?
この二人には肉か寿司かしか選択肢がないのか?他にも食べ物はいっぱいあるだろ??
「あっえっ、うん」
ただただふたりについていくことしか今の俺に選択肢はなさそうだ。