■ ■ ■
「なんで江口と付き合ってんの?」
柿原さんの言葉はいつでもストレートだ。
「お前眼中なさそうだったじゃん」
「そんなことないですよ。江口さん、いつもそばにいて欲しい時にいてくれるから。」
「そりゃあ江口はお前に昔からゾッコンだったから」
「江口さんはどんなわたしでも好きでいてくれるって安心感が、好きなんです」
「昔の彼氏は?そんなんじゃないの?」
「昔?」
「いたっしょ?」
「ハハ、学生の頃の恋愛なんて」
うそ。ずっと覚えてる。
わたしの前を歩いてくれた人。
わたしが手を伸ばすのをやめてしまった。それだけ。今もずっと変わらず応援してくれる優しい人。時々その優しさが痛いと感じることもある。罪悪感を感じてしまうのに、甘えたくなってしまう優しさ。
甘えちゃダメだって
そう思いながら別の道を決めたのに
結局その道でこうして江口さんの懐の広さに甘えてる
それでいいのかなって
あの時と一緒なんじゃないかって時々怖くなる。
染谷さんは「過去を否定しないで」っていう。浅沼さんは「こじらせすぎだ」っていう。
どうするのが正解なんだろう
「江口はいいやつだよ」
そんなやつを独り占めできるんだから自信持てよって笑った柿原さんに、そうですね、と返すのが精一杯だった。