■ ■ ■
息を切らして玄関を開けると部屋は真っ暗だった。
握ったままの携帯も繋がらない。
でも今朝履いて出ていった青いハイヒールは足元に脱ぎ捨てられているし、無用心にもドアの鍵は開いたままだった。
スニーカーを脱ぎ捨てて手元のスイッチを全部押して電気をつける。
「瑞希、?」
真っ暗なリビングの電気をつけるとソファーの上でコートを着たまま丸くなる瑞希 を見つけた。
時計はとっくに深夜2:00を過ぎていた。
「瑞希、」
泣いてたらどうしよう。怒ってたらどうしよう。なんて声をかけたらいいんだろう。
そっと声をかけても動かないその身体に恐る恐る近づく。
もう一度名前を呼んで背中に触れると、むくりと顔を上げる。
恐る恐る顔を除くと眠そうな瞳をパッと顔を輝かせて、「おかえりなさい」って言ってくれた。
「あっ、すみません、どうしても江口さんのおめでとうが最初がよくって、携帯電源切ってて」
ケーキが買えなかったとか、日付変わる前に帰ってこれなかったとか
そんな小さいこともうどうでもいい。
折れそうな華奢な身体を抱きしめる。
「誕生日おめでとう、」
何より彼女が、些細なことといえど、俺に1番であってほしいと望んでくれたことが嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。