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くっすんこと楠田亜衣奈セレクトの小洒落たバー。
慣れたようにわたしの分のシャンパンまで注文してくれる。
アニメの収録終わり、久しぶりに飲みにいこうよって言ってくれたのはくっすんさんのほう。
青春真っ盛りな恋愛ものの収録の後のせいもあって、30のボーダーラインが見えてきたわたしたちにはその輝きが眩しくてお酒を煽ってしまうのは仕方ないことだと許してほしい。
「わたし、自己嫌悪の渦から逃れるために恋愛してる気がする」
「珍しい。瑞希ちゃんが饒舌なんて」
「なんかこれでいいのかなって、思ったりすることあるじゃん」
「そうね」
くっすんさんはぐいっとシャンパンを飲み干す。
「最近なんかでみて思ったんだけどさ、一緒にいる人とは「好き」とか「嫌い」とかじゃなくて「違和感のなさ」が幸せに繋がってるんだって。そう考えるとさ、この先自分が幸せになれるのは、自分のことを好きでいてくれる違和感のない人と一緒にいることなんじゃないかってさ」
いつになく真面目な回答に、脳裏に浮かぶのはやっぱり江口さん。
「好きでいてくれることに違和感がない、異性」
「最近なんかあったの?」
「 プロポーズされたんだよね」
「は?」
「たしかに、違和感なく受け入れられたなって、ふと思い出した」
「え、なんでそんな大切なことさらっとわたしにいうの?」
「え、言っちゃダメなの」
「えっだってなんか違うじゃん?!そういう重大なやつって花江くんらへんとかにまず最初にいうやつじゃないの?!」
「実感湧かなすぎて他で話題にしなかったな...いまやっと消化期間ってかんじ」
「やめてよ、心臓に悪いからさ〜でさ、なんて答えたの?」
「 これからもよろしくお願いしますって」
ずっとずっと実感がわかなかった。
結婚、するんだ。
断る理由もなかったけど、かといって、これからなにが変わるんだろう。
この関係の名前が変わることがこんなにも漠然としていていいのかって、そんなことを考えていた。
でもきっとそれは、江口さんの隣にいれることに違和感を感じなかったから。
きっとそう。
「まあでもさ、おめでとう」
その一言が、嬉しくて。
あっ、わたしちゃんと嬉しいんだって思えて。
安心して、嬉しくてなぜか、涙が溢れてきた。
「ありがとう」
今日帰ったら、江口さんにありがとうって言おう、そうおもった。