■ ■ ■

「あ〜緊張する」

白い息を吐きながら彼女の実家への道を歩く。
都会生まれシティーガールのような顔をして、実は田舎の生まれ。彼女の故郷だというのに当の本人は雪の積もる田んぼのあぜ道が似合わない。

「そうですね」

新幹線の中で流れる景色を眺めながら、彼女自身も久しぶりな帰省だと話してくれた。

まさか彼女の実家にご挨拶に行くなんて、去年の俺は想像さえもしていないだろう。
1ヶ月前ですら想像していなかったんだから。



「結婚しよう」、そう切り出したのはほんの1カ月前の話。いつものように、部屋ですこしだけ良いウイスキーを開けて乾杯した後のこと。
考えさせてほしい、といわれるのを覚悟してたのに、実際はほんの少し考えたあとに「きっと江口さんとこのまま結婚するんだろうなって思ってた」とはにかまれて、こちらが拍子抜けしたのをよく覚えてる。

差し出した指輪は今でも彼女の指にぴったり馴染んでいる。それを見るたびに頬が緩んでしまう。
たったそれだけなのに、こんなにうれしいなんて。


「瑞希の人生、後悔しない?」

「しないよ」