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「江口さんのおかげではじめて、普通の女の子になりたいっておもったんです」
そんな彼女の突然の休業宣言から2年が経った。
2年間、まるっきりメディアにもSNSにも姿を見せることなく過ごしていた彼女はその間に1人の命をお腹に宿し、母になった。
子供がもうちょっと大きくならないとなかなか劇も観に行けなくてね、と話すすっかり主婦になった瑞希ちゃんは、昨日俳優仲間がわざわざ届けてくれたというDVDを部屋で流していた。
「赤ちゃんの頃からイケメンに甘やかされちゃうと、絶対よくないと思うんだよね」
「はじめての読み聞かせが小野Dさんだから、贅沢だよね」
「江口さんは?」
「一緒にアンパンマンごっこしてる」
梅ちゃんに興味津々の娘ちゃんに、若干困り気味の梅ちゃん。なぜか壮馬くんは相手の仕方に慣れが見える。
江口さんも含めてみんなで一緒に飲むのは相変わらず今でも続いている。ただ、江口邸で飲むのがお決まりになっただけ。
西山宏太朗をはじめとする声優仲間もおいしいお酒を片手にやってきては、江口さんと瑞希ちゃんのかわいい娘の相手をする。
江口さんは相変わらずイケメン声優として引っ張りだこ。Trignalの活動も続けてる。メディアに出てる姿は既婚者にも見えないし、正直イベントでいじられまくってる姿を見ると一児の父親だなんて嘘みたいだ。
でも娘ちゃんが大きくなったときに誰と結婚するっていいだすかな、なんて言ったら江口さんが文句を言いだして、すっかりお父さんなんだなっておもった。
俺がいうのもあれだけど、あんなに生活感のなかった二人がこうやって家庭を築いてるんだから、やっぱり結婚ってすごいなあって。
「ちょっとずつ仕事再開しようって話をしてるんだけどさ、いざそうおもうとなんかこんなに怖いんだって」
「女の子の生活楽しかった?」
「楽しかった」
「よかった。仕事なら大丈夫だよ。また一緒にやってけばいいよ」
「なっちゃんの隣なら安心」
「でしょ〜任せて、女の子の瑞希ちゃんのことは江口さんがダントツなのは認めるけど、声優久保瑞希のことは結構自信あるんだ」
「心強い」
デビューした時には想像できなかった未来。
きっとこれから先も想像できないことがたくさん起こるんだろう。
おつまみの準備をしている彼女を眺めながら、そう思う。
「瑞希〜ただいま、って!お前ら!またいんのかよ!」
「あ〜パパおかえり〜」
「パパじゃない、帰れ、斉藤あざと壮馬」
「壮馬くん、絵本また持ってきてくれたよ」
「でた、斉藤壮馬厳選名作絵本」
「そろそろ本屋ができるよ」
「英才教育を施そうとおもってね」
「もう親戚のおじさんだよ、それ」