■ ■ ■
妹のような、よきライバルのような、そんなただの知り合いでは片付けられない友人が、ついに結婚した。
うれしいはずなのに、
こんなにも、実感がわかないとは。
久しぶりに参加する結婚式がまさか瑞希の式だと、去年の俺は想像していただろうか。
披露宴までの間、式場の中庭で缶コーヒーをあける。雨女のあいつにしては珍しく、よく晴れた少し暖かい日。
彼女のウエディングドレス姿をみて、誓いのキスを見守って。
彼女に投げかける「おめでとう」は、もちろん心からのものだけど、それでいて、存外呆気ないものだとおもってしまう自分がいる。
佐藤流司が隣にやってきて項垂れる。
彼もまた、彼女を姉のように慕っていたわけで。
「俺、瑞希さんと飲みいったりしてたのに結婚するの招待されるまで全然知らなくて」
「色々急遽だったんだってさ。公表した後だと騒がれそうだからって」
「染さんは前から知ってたんですか?」
「招待状が届く前日に、思い出したように電話が来たよ」
「ひろきくんも?」
「さすがにちょっと前に知ってたってさ。休演日でよかったーって言ってた」
知り合いの多い彼女が招待したのは、ひろきくん、圭くん、廣瀬の大ちゃん、それからきたむー、流司、麻璃央にあらまっきー。
一応秘密扱いなんであんまり呼べなくて、と本人が申し訳なさそうにいっていたことを流司に伝えると、俳優集めて瑞希さんをお祝いする会企画しよう、なんていいだした。
「瑞希さん、式あげるのが意外」
「昔じゃ面倒だからって普通にすっ飛ばしてただろうね。それだけ絆されてるってことだよ」
「でも、幸せそうで良かった。瑞希さんがそう思えるくらい幸せで」
「そうね」
本当に。
あんな清々しく笑ってるなんて。
きっとそれが、夢に思えるくらいに現実味がない原因なんじゃないかとおもってしまう。あの日送り出したことを必死に肯定したい自分が見たい都合のいい、夢。
「ひろきくん、どんな気持ちなのかな」
ポツリと流司が零した一言にずっと押し込めてた気持ちが喉に突っかかる。
向こうで何人かと話しながらひろきくんが笑っているのが見える。
いつも瑞希の背中をていたのはひろきくんだった。
いつか、瑞希が結婚しても心から祝えるとあの微笑みを崩さなかった。
「今日くらい素直になればいいのに」
彼女が結婚して、なにが変わるんだろう。
あの細い薬指に指輪があっても、彼女は変わらず仕事もするだろうし、俺たちと関わるんだろう。
やっぱり何かが変わる未来が想像できないまま、幸せそうに笑う彼女を、そしてそれを祝福するひろきくんを、後ろの方で静かに眺めることしかできなかった。
瑞希、幸せになれて、本当によかったね。