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自動ドアの前に立ってげんなり肩を落とす。
朝家を出たときは気持ちいいくらい晴れていたのに、そりゃあ1日篭っていれば天気も変わるか。気を抜いて薄めのシャツを着てきてしまったことを後悔する。最近の気候は乙女ごころよりも読みづらい。
しかもよりによって今日は傘を持っていない上に、駅から少し離れたスタジオだ。土砂降りの外を眺めながら、どうしたものかと考える。今日は朝の電車も遅れるしミスも多かったしコンビニで買ったコーヒーはなんだか味が薄かったし、なんだか1日不幸続きで嫌になっちゃう。
「不幸少女瑞希〜」
振り返ると柿原さんが右手を挙げた。今日も黒のライダースがよくお似合いで。せっかくコンビニまでのダッシュを決意したのにすっかり走る気が無くなってしまった。
「やめてくださいよ、なんですかその魔法少女みたいなノリ」
「ハイハイ、そんな怪訝な顔しないの〜いい女台無し」
どうせ傘忘れたんでしょ、と図星をつかれる。今日はたまたま、たまたま折りたたみ傘を忘れちゃっただけなのに。眉間の皺を伸ばそうとぐりぐりしてくるのは地味に痛いからやめてほしい。化粧崩れてそう。
「柿原さんこそ傘は?」
「俺車だから。あわよくば車まで瑞希に入れてもらおうと思って追いかけてきたんだけど、こんな日にダッシュしようとすんなんてお前馬鹿か」
弱まるどころか強くなっていく雨足に、ため息をつく。そうですよね以外に返す言葉が見つからない。隣でくるくると車の鍵を弄ぶ柿原さんも、やみそうにねーな、なんてぼやいている。
「しょうがない。乗せてやるから、今日の飲み会、お前も強制参加な」
「誰がいらっしゃるんですか?」
「秘密〜お前も仲いい人だよ」
「嫌な予感しかないです、雨に濡れて帰って方がいい気がします!」
「まあまあ。車取ってくるからちょっと待ってろって」
これも今日の不幸のうちに入るのか、それとも不幸中の幸いなのか。
駐車場の方へ走っていく柿原さんの背中に向かってため息をついた。