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「今から帰るけど何か買ってくるものある?」
収録終わりに誰かに電話をしている壮馬がいた。とても優しい声で紡がれるそれに彼女さんかなと率直な感想を抱く。
「味噌?なかったっけ……ん、わかった。…ふふ、うん。ありがとう」なんて、それだけで相手のことをどれだけ想っているかが伝わってきた。大事にしてるんだなあ。
電話を切った壮馬と目が合う。少しだけ気恥しそうに笑った姿にこっちまでニヤけてしまった。
「彼女さん?」
「えと…はい」
「えー、いいなあ。かわいい?どんな子?」
へらへらしながら言った言葉に壮馬は目を丸くして一瞬だけ驚いた素振りを見せた。
あれ、なんか変なこと言ったかな。(もしかしてちょっとめんどくさかった?)
「……そうですね、ぼけーっとしてそうに見えて実はけっこうしっかりしてて」
「うんうん」
「ある程度のことは何でもできるんですけど不器用な一面もあって、でもそういうところは見せないようにする子…ですかね」
「へぇ、頑張り屋さんなんだね」
「あ、あと僕の前だとかわいいです」
「えー!うわー、惚気だー!」
ここまで教えてくれるとは思ってなかったから何だかこっちが照れてしまう。素直に惚気られた。ベタ惚れか。
こんなときに、若いっていいなあと思ってしまう年齢になってしまったことを痛感した。すごくキラキラしてる。こんなに想ってもらえて彼女さんも幸せだろう。
「まさにタイプの人って感じ?」
「いや、それがそうでもないんですよねえ。好きなタイプにはあまり当てはまってなくて、」
「え、そうなんだ」
「でもほとんど一目惚れだったんですけどね!」
「それすごいな!もう、この人だって思ったんだろうね。本能的な何かが」
「ふふ、そうですね。かもしれません」
いやぁ、お恥ずかしい、と言う割には満更でもない感じだ。
「結局は好きになった人がタイプです。今は彼女以外考えられませんし」
「おお…言うじゃん…」
「あー…これ、かなり恥ずかしいやつですよね…」
「俺は楽しい」
「た、たのしい、ですか…?」
後輩の恋愛話なんて聞かないし、こう改まって聞いてみるとなかなかに面白い。聞けば2年は付き合ってると言うじゃないか。一目惚れでそこまで続いてれば、言うまでもなく運命の人なのだろう。
「……あ、この話、飛鳥ちゃんにはしないでもらえると助かります」
「え?なんで飛鳥……」
「それじゃあ、お先に失礼します。お疲れ様でした!」
「あ、お疲れ様!…………ん?」
飛鳥と壮馬は同じ81で、仲が良くて、よく一緒にいるところを見、る……
「!?」
もしかしてあの2人、付き合ってるの!?
よくよく思い返してみれば、壮馬が言っていた彼女の特徴は飛鳥によく似ている。というかほとんど飛鳥。うわ、じゃあさっきの電話の相手も、今の惚気の相手も飛鳥?茜飛鳥なの?……え?2年以上付き合ってるのに俺知らなかったの…?それって逆にすごくない?
あとで江口くんにそれとなく聞いてみると「あ、飛鳥と壮馬ですか?付き合ってますよ。あいつら聞かれないかぎり話しませんからね」と苦笑していた。ああ、だからあのとき一瞬驚いたのか、壮馬は。
「よーく見ると、わかります。いかに仲良しか」
「たしかにめちゃくちゃ仲良いのにベタベタしてないから付き合ってるとかわからないね…」
「人前だと飛鳥が他人行儀になりますからね…。大丈夫です、僕もわかりませんでした」
「やっぱり……?」
俺だけじゃなくて少し安心した。