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「ただい、ま……?」
収録を終えて家に帰ると部屋の電気とテレビがつけっぱなしで、もう1人の住人はソファーで丸くなって寝ていた。出かけたときと同じ格好で、カバンもすぐ側に置きっぱなしってことはまだ帰ってきて間もないのかもしれない。もしかして待っててくれたのかな。それだったら待たせてごめんね。
ふと、テーブルを見ると朝はなかった包みがあった。たぶんバレンタインのお菓子かな。実際、飛鳥が作ってるところ見てたし。やめてって言われたけど気になってつい、ね。
「ん…そうまくん…?」
「うん。お疲れさま」
「おかえり。壮馬くんもおつかれさま、」
よいしょ、と起き上がった飛鳥は1度伸びをして、それからテーブルまで歩いて行き、包みを持って俺の前まで来た。
「セーフだね」と笑って差し出すそれを受け取ると飛鳥は安心したように隣に座った。付き合うようになってから毎年もらってるわけだけど、何度もらってもいいものだと思う。これだけで明日からも頑張れる気がする。
「まあ壮馬くん見てたから中身はわかると思うけど」
「それはそれ。実際、飛鳥からもらうってことが大事なんだから」
「そっか……?」
たぶん飛鳥はよくわかっていないけど、わからなくていい。これはきっと、俺にしかわからない。
「あ、そうだ。はい」
「え、な、なに……?」
おもむろに取り出したのは小さなブーケ。色とりどりの花はその場で選んでもらったものだから種類とかはわからないけど選んでくれたのは花屋さんだ。バレンタインに花束を買っていく男なんて、そういう意味しかないだろう。
「彼女さんにですか?」「そうなんですよー」「なら張り切って選びますね!」とニコニコしながら選んでくれた女性店員さん、ありがとう。ちゃんと渡せました。
「わっ……こ、これ、どうしたの?」
「欧米では男性から渡すのが普通らしいし、今回は俺もやってみようと思って」
「待って待って、そんな……え、」
顔あつ、と片手でパタパタと扇ぎながら花束を見つめる飛鳥の顔は赤い。喜んでもらえたかな。だったら俺も嬉しいんだけど。
「本当に、あの、うれしい、です……」
「大したものじゃないけどね」
「な、なんで?じゅうぶんだよ。…うわ、やばいな、嬉しすぎる…」
「そっか。…そっかあ。よかったー」
2人してへらりと笑ってお互いがもらったものを手にする。俺は飛鳥からのお菓子、飛鳥は俺があげた花束。心が満たされるような高揚感に「食べるのもったいないな」と言うと「でも食べてね」と笑い声混じりで返ってきた。
こんなに嬉しそうな飛鳥が見れるなら、たまにはこういうバレンタインデーもいいかもしれない。