■ ■ ■
「あっつい……」
明日の分の台本を確認しながらソファの上に寝転がる。現在の時刻は19時16分。
どういうわけかエアコンのリモコンが見つからないため、部屋の中は非常に蒸し暑くなっている。じっとりと服が肌に張り付く感じが鬱陶しい。うっかりアイス2本も食べちゃったよ。このあと壮馬くん来るし、どうにかしといてあげたいけど、でも、無理かもしれない。とりあえずアイスは残ってる。たぶん。
がちゃりと鍵の開く音が聞こえて、壮馬くんの声がした。
「あっつ…え、どうしたの」
「そうまくん…おつかれさま…リモコンない…」
「リモコン…これかな。玄関にあったよ?」
「げんかん」
「そう。玄関」
起き上がった体は再びソファに沈んだ。なんだよ、どういうこと。玄関にあったって、なんで玄関にあるんだよ。
壮馬くんは「たぶん出かけるときにスマホと間違えて持ってきてそのまま玄関に置いちゃったパターンじゃない?」とすらりと述べた。さすが、よくわかってらっしゃる。多分そういうことだろう。覚えてないけど。
この家のエアコンのリモコンは自分のスマホと姿形がよく似ていた。
「壮馬くん神か…」
「俺が来なかったら干からびてたかもね」
ごもっともです。
「ふふ。お礼に飛鳥からハグしてくれてもいいよ」
「ハグだけでいいの?」
「………」
「……ごめん今のなし」
「はい、無理です聞きました。じゃあ今日はとことん付き合ってもらうから」
人畜無害そうに爽やかに笑うくせに、言っていることはなかなかにハードで少し震えた。いや、私から言ったようなものだけど、でもまさか本気にするなんて。
私の手を引く壮馬くんがまるで悪魔に見えた。
「あ、あしたはやい…」
「飛鳥から言ったんだからね」
「でもそういう意味じゃ…」
「他にどんな意味があるの。大丈夫、ちゃんと考慮するよ」
「せっかく涼しくなると思ったのに…」