◎さぁ、行こう
「薫、何するんだい!?」
何って決まってるじゃないか。
「やめろ!その刀を捨てるんだ!!」
この雪村に伝わる刀が僕と千鶴を繋いでるんだ。
捨てるわけないだろう?
「やめろ……やめてください!」
それにこの刀が無いと約束が守れないじゃないか。
「やめっ……」
やっと迎えに行けるよ、玻璃
最終話
屋敷中から悲鳴や断末魔が聞こえる。
「待ちわびたぞ、薫……。」
さぁ私も準備をするとしようか。
どんどんと悲鳴は近くなり屋敷から人の気配は消えていく。
私を育ててくれた乳母や女中、そしてお父様が死んでいくのは悲しい。
だがそれ以上に私は外の世界が見たいのだ。
自分でも薄情な奴だと思う。
それでも私は、薫は止められない。
私は外の世界をこの眼で見る。
唯一の気配が近くなる。
「来たか……。」
私は部屋の真ん中に正座し、奴が来るのを待つ。
足音が聞こえだし、やがて私の部屋の前の障子に影が映り、戸が開く。
「迎えに来たよ、僕の姫。」
薫はあの日と変わらない笑顔で手を差し伸べる。
「遅いぞ、薫。」
私はその手を取りに立ち上がる。
これからは私のことを誰も知らない世界でこいつと、薫と生きていく。
「それに私はもう姫ではない。その呼び方気を付けよ。」
「僕の姫には変わりないんだけどね。君もその偉そうなしゃべり方直した方がいいよ。」
「む!そ、そうだな……。心掛けよう。」
じゃあ行こうか、と薫は私の手を引いた。
未練はない。
さぁ、行こう
私達の世界へ
「まずは千鶴を探さないとな。」
「うむ、私も会ってみたいぞ。」
「しゃべり方。」
「む!私も、会ってみたい……な?」
「よくできました。」
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