◎小さな名探偵と肉食系女子


海の家に買い出しに行った安室さんが帰ってこない。嫌な予感がする…。

「迎えに行ってあげた方がいいんじゃない?」
「やっぽそう思うか?」

灰原もそう思ってたらしくため息をつきながら遠くを見た。やっぱ一人で行かせたのが間違いだったなぁ。重たい腰をあげると歩美達と砂遊びをしていた名前さんが寄ってきた。

「どっか行くの?一人じゃ危ないよ?」
「危ないのは安室さんみたいだからちょっと迎えに行ってくるね。」

そう言うと名前さんは嫌そうな顔をしたけど首を振ってついて行くと言った。おぉ、俺安室さんに勝った。
二人で海の家の方へ歩いていくと案の定人集りが。中心には金髪褐色のイケメンが両手に焼きそばを持ち、青筋を立てた笑顔で囲まれていた。周りの女の人は自分に自信を持っているのか露出の高い水着で肌を密着させギラギラした目で猫撫で声を出している。なんと恐ろしい光景か。名前さんも横で唖然としている。

「あれ、ほっといちゃダメ?」
「助けないと俺達の焼きそばが帰ってこないよ。」
「それは困るなぁ。」

焼きそば 〉超えられない壁 〉安室さん
可哀想な図式である。
名前さんは少し考えた後にやりと笑った。

「コナンくん、安室さんの下の名前なんだっけ?」
「え?透だけど?」
「おっけー。」

名前さんはにやりと笑うと俺の手をとって人集りに向かって歩きだした。勇者。さてどんな方法で助け出すのか。

「あの、」
「なによ邪魔しな……?!」

化粧バリバリのお姉さんが安室さんに向かって出していた猫撫で声とは大違いのドスをきかせた声で振り返るが名前さんの顔を見て固まった。名前さん美人だからな…。狼狽えながらも虚勢をはるお姉さんはすごいよ。そこまでして安室さんを捕まえたいか。

「その人、離してもらえませんか。」
「はぁ?あんたも彼を狙ってるの?残念だけど彼は私達と遊ぶんだから諦めてくれる?」
「いえ、そうではなくて。」
「じゃあ何?!」
「その人、うちの旦那なので。」

空気が凍りついた。安室さんですらぽかんとしている。作戦ってこれだったのか…。俺がいることでより一層信憑性が増してるよな…。でも俺名前さんの子にしてはでかくないか?

「透さん。」
「は、はい?!」

あ、裏返った。

「焼きそば買ってきてくれるって言ったから頼んだのに帰ってこないからコナンくんと探しに来てみたら。ずいぶんと楽しそうね。」
「ち!違うんだこれは!」
「コナンくんはこんな大人になっちゃ駄目だよ?パパなんてほって焼きそば食べに行こ。」
「うん!じゃあねパパー。」
「待って許してごめん!置いてかないで!!」

くるりと踵を返した名前さんの顔を覗き込むと笑いをこらえるのに必死で肩を震わせていた。それが向こうには泣いているように見えるらしい。ざわざわとしていた。それを涙目で追いかける安室さんはさぞ滑稽に映っただろう。まぁ演技なんだろうけど迫真だなぁ。
追いついてきた安室さんに名前さんは

「1つ貸しです。」

楽しそうに笑った。

(なんだかんだ安室さんも楽しんでたみたいだし)



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