最後のゲーム、それは最悪だった。
サバイバー達は逃げてゲートを出ればいい、ハンターはステージにいるものを倒せばいい。そういうルールだった。サバイバー達はそれを知らない。荘園が解散する以上、ただゲートを出れば幸せになれると思っていた。ハンターは一人でも倒さなければ、体が崩れてその場で消えてしまう。サバイバーを見逃すわけにも行かない。
ゲーム開始と同時に自動的に各ステージに送り込まれ、誰がどこにいるかわからない状況でスタートした。
私は皮肉にもよく見慣れた2階建ての小屋にいた。子供の声が聞こえ、愉快な音楽が聞こえる。遊園地だ。
彼女を思い出す、ゲームで何度か会ったが、荘園に来てからちゃんと話したことはなかった。彼女が無事で出れる事を、
そう思ったが、無事を願うとオフェンス、ウィリアム・エリスの顔が出てくる。こんなゲームに必要もないのに、情を持ってしまったか。ポケットに手を突っ込む。昨日貰った鍵が入っているのを確認してため息をつく。
近くにあったパーツを拾い、装着する。誰が同じゲームに参加しているかはわからないが、私は戦わなければいけない。
最悪は最悪を呼ぶ。
私ではない誰かが、もうすでに誰かを始末しているようだった。目の前のテントからは燃え盛る炎と独特な焼ける匂い、サバイバーであったであろう何かがあった。荘園の主の事だ、ハンターだけではなく、サバイバー同士でも自滅するように仕組んだのだろう。きっと最初から簡単に逃す気はなかったのだ。誰が燃えているのかもわからない、わかりたくないのかのしれない。
このステージ上に残っているサバイバーの数はわからないが、解読機は残り2台。仲間割れが始まればゲート開放は難しい、逃げるにはハッチしかないだろう。
一人、また一人、サバイバーをダウンさせていく。よく見知ったサバイバー達だった。ダウンし椅子に括ろうとする前に体がボロボロと崩れて消えていく中、呪いの言葉のように何かを吐き出しては消えていった。全員ダウンを取ろうとする前に負傷していた。やはり、仲間割れが起こっていたのだろう。
残りの一人が見つからない。
ぐるぐるとステージを巡っていると道に血が垂れているのを見つけた。点々と道標のように続いている。それを追う、負傷しているならもうこれで終わりだ。この胸糞悪いゲームからも何もかも解放される。
ゲートの前に辿り着いた。ここで血が止まっている。ジェットコースターの駅の階段に近寄ると丸まった何かを見つけた。灰色の泥だらけのユニホーム、背番号に入った背中が見えた。
嫌な予感とは裏腹にロケットを置いてしゃがんだ。腕を伸ばす。動かないそれの肩を掴み、仰向けにさせる。
オフェンスだ。目を瞑り血の気のない顔をしている。胸にナイフが刺さり、ユニホームは真っ赤に染まっていた。
「おい、」
顔を軽く叩いてみるが反応がない。呼吸もしているようには見えない。
「オフェ、ウィリアム!」
少し強く叩くが動きもしない。明らかに誰見ても手遅れだった。叩いた顔が冷たい。ハンターに倒されていないから消えていないのか?全く状況がわからない。
自分でナイフを抜こうとしたのか、両手でナイフを握っていた。手の隙間から何かが落ちる。
真っ赤に染まったメリーゴーランドのミニチュアだ。
「最後に縋るものが違うだろ」
落ちていたメリーゴーランドを掴んで自分のポケットにいれる。
オフェンスの体を持ち上げる。ゲートは空いていないし、私では開けることができない。微かに音がする方へ歩く、段々と音が大きくなっていく。川沿いの地面にハッチを見つけた。肩で抱き直し、ポケットから自分の持っていた鍵を取り出しウィリアムの手の中へ入れてそっと握らせる。
「さよなら、ウィリアム」
ハッチにウィリアムを投げ入れた、そのまま吸い込まれるように消えていく。
そこで私の記憶も終わりだ。
2021/10/30