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episode 1
夢か現実か
[2/2]







暑苦しさに目を覚ました。おデコに冷えピタ、体にはしっかりと布団がかけられていてあぁ、家に入れてもらえたんだ。と一安心しつつ落胆する。またあの男との生活が始まるんだ。逃げ出してしまいたいけどすぐに捕まってしまう。ぼんやりとした頭で考えているとふと、違和感を感じた。







「ここ、どこだ・・・」





真っ白い天井に大きなベッド、その横にはチェストが置いてあるだけの部屋。おかしい、うちの寝室は和室で布団だったはず。だけどふかふかのベッドは心地よくて、それに推しキャラの夢を見たのだ。もう一度寝てしまってもいいだろう。その時トントン、とノックの音が響いた。







「は、い・・・?」



「おはようございます、具合いかがですか?」





ドアからひょこっと顔を出したのは夢に出てきた安室さんだった。そういえば夢の内容は安室さんにお姫様抱っこしてもらってた夢だった。





「あれ、夢続いてるのかな・・・」




夢の中で目が覚めてまた夢を見てるだなんて、だが目の前の安室さんは?の表情を浮かべている。





「まだ寝惚けてますか?昨夜うちの前で座り込んでいたので・・・とりあえず応急処置だけでもと寝ててもらったんですが勝手に部屋に入れてしまいすみません。」




「え、ぇ?大丈夫ですありがとうございます。えっと、安室さん?いや降谷さん?夢がやけにリアルなんだけどどうしようかっこ、っ?!」




かっこいい。とにかくかっこいい!!夢が覚めないならずっと夢にいたい!!なんて能天気に思っていたらドア付近にいたはずの安室さんが凄い速さで私の上に飛び乗り首に手をかけた






「っっ!」




「お前は何者だ?何故俺を知っている?答えによっては今ここで始末する」




「っ、げほ、くるしっ」





苦しい、怖い、これは夢じゃない。夢のようだけど痛みも恐怖もリアルで、もしかしたらホンモノの安室さんかもとありえない想像を信じてしまう。





「ま、って・・・しゃべれな、い」




これがもし本当に夢じゃないとしたら




「答えろ!」





この世界にあの男がいないとするなら





「っ、かは」






っていうかどうせあのままなら死んでいたはず。だったら安室さんに殺されたい








生理的な涙がツーと流れ本格的に息が出来なくなってきた。おいおい、答えろと言っておきながら喋る隙がないじゃないか。






「ありが、と。も、ころし、てっっげほっ」



「!!」




「は、はっ、はぁ」






離された手。酸素を吸い込もうと本能的に深呼吸をする。涙は止まらなく溢れてきて、目の前の安室さんは困ったように怖い顔をする。





「お前は何者だ?」



「私はただの一般人・・・」



「嘘をつくな。ただの一般人が俺の名を知るはずがない。お前、組織と関わりがあるのか?」




「関わりなんてないです。知ってる理由は言ってもわからないと思います。て言うかここどこ・・・」




「とりあえず名前と住所と生年月日を」




「は、い。名前はことみで、住所はーーーーー」




「お前が何者か調べる。白か黒かハッキリわかるまでここで監禁する。わかったな?」






「はい・・・」






首を絞められた感覚も、頬つねってみても、夢から覚めることはなく本当にこれは夢じゃないと感じる。だとしたら私は漫画の世界に入り込んでしまったと言うことだろうか?現実の世界で私は、どうなっているんだろう。







「それで、俺を知っている経緯を話せ」



多分私の情報を風見さんにでも連絡したのであろう、安室さんは携帯をしまいベッドサイドに腰掛け私を尋問する。





「変なやつだと思わないでくださいね?私、多分ここじゃない違う世界から来たんだと思います・・・」




「は?」




「その、私の世界でやっているアニメがあなたの登場するアニメで・・・それで知っていたと言うか、なんというか・・・私が言った住所、存在しないんじゃないかなぁ」





その時丁度、安室さんの携帯に連絡が入ったようで。チッと舌打ちをする安室さんを見てやっぱり存在しないんだと少し寂しくなった。





「最近どこかに頭をぶつけたり、元々虚言癖があったりは?」




「ぶつけた記憶はないですし、虚言なんて言いません」







それら何回も本当のことを言えと問い詰められたけれどやっぱり信じてもらえなくて、私の腹の虫のおかげで尋問が終了した。






「恐らく組織の一員でないことはわかった。一員だったら総出で俺を殺しに来るだろうし。だが得体の知れない人物を解放することは出来ない。このままここで監視する。」




「わかり、ました・・・」





せっかく大好きな安室さんと一緒にいれるのに、全然嬉しくない。むしろ怖い。疑われるって、いい事ないなぁ。





「そうだ、丁度いいものがある」




そう言って安室さんが持ってきたものは幅が広いリング型のピアスだった。




「これは発信機だ。俺がいない間勝手に居なくなられても困るからな。一度付けたらロックを解除しない限り取れない、無理に取ろうとすると通知が来るから辞めておくんだな」




カチと言う音と共に付けられたピアスはやけに重く感じた。私、行く所なんて別にないのに。






そうして私と安室さんの奇妙な同棲生活が始まったーーーーーーー








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