01



入学式当日、車で送ってもらい掲示板の前でクラス表を見上げる。
自分の名前を探せば割とすぐに見つかったが、横の男子の名前を見て固まった。
私の名前の横に同じ苗字が書いてあり、心の中でマジか、と囁く。
絶対に同じクラスにはなることないと思っていた、ただ遠くから眺められればそれで、と思って居たのにクラスは同じしかも……。
教室に入って黒板を見れば、席も隣でもうすでにその人は座っていた。
大きな目で髪はまだ短い、幼い顔でつまらなそうに窓の外を見ている。
うわ、可愛いなと思いながら、仕方なく隣に座って鞄から携帯を出して弄る。
色んな人から入学おめでとう、の連絡が来ていたのでそれに返事をしていれば、チャイムが鳴ったので携帯をしまう。
ぼーっとしていれば先生が来て、おめでとうと、説明を受けて体育館に行く。
そこでまた校長先生の話やらなんやら聞いて、教室に戻ってくる。
先生の説明を聞いて、明日も授業はなく、自己紹介をやるから考えておくように、と言われ今日の学校は終わった。
直ぐに鞄を背負って一人教室を出て、外に行けば車が停まっていたので乗り込む。


「おめでとう、さて、何食べ行きますか?」

『スシ』

「おっしゃ、そんじゃ寿司行きますか!」

『おー!』


手を上げればお父さんが車を動かし、私達は回転ずしに来た。
もりもり食べ、お腹も膨れ二人で家に帰ってから、少しゆっくりして自転車に乗って京都の町を散策した。


*********


翌日は自転車で登校して自転車をがちがちに鍵で固定して教室に行けばもう隣の人は来ていて、外を見ていた。
私は横に座ってさりげなく、おはようございます、と声をかければこっちを見た。


「?」


そして首を傾げたので私も首を傾げる。
あ、聞こえなかったかな、ともう一度おはようございます、と伝える。


『Bonjour(おはようございます)』

「……おはようさん」


返事が帰って来たので頷けば、また外を眺め、私は一人どきどきしている。
遠くから見てるだけで済まそうと思って居たのに、話かけてしまった。
うわぁああぁあ、と心で思って居ればチャイムが鳴ってしばらくして先生が来た。
昨日言っていた通り自己紹介で男子の名前順で、挨拶を聞いて行き、最後に横の人が立つ。


「御堂筋翔です、好きなもんも趣味もロードです、よろしゅう」


すとんと座って拍手する。
次に女子からで最後私で、先生があ、すまん忘れとった、と立ち上がる。


「挨拶わかるか? あー、英語やないもんな、ぼんじゅーる?」

『Bonjour』

「そや、そや、名前、あー、ネイム」

『初めまして、御堂筋アリスです、フランスから引っ越してきました、まだ日本語へんかもしれませんがよろしくお願いします』

「おお、そやそや、好きなもんあるか?」

『あー、好き? ああ、日本のお寿司好きです、後アニメも好きです、日本のアニメは綺麗で凄いです』

「おおぉお、そうやろ、そうやろ」

『変な言葉言ってたら教えてください』


頭を下げて座れば先生が、御堂筋はな、あー、と声をもらす。


「すまん、二人おるな、女の子の方や、さっきも言うとったけどフランスから来たばかりでな、ちょっとフランス語出てまうらしいんよ、せやから、そう言う時は言うてあげてな、仲ようしたってな」


ざわざわする中、ほんなら今日もこれで終わりで明日から授業の説明で、身体測定やから、体育着忘れんように、と言われた。
体育着か、と携帯に打ち込んでさよならの挨拶をしたので鞄を背負う。
そして自然に、隣の彼にさようならの挨拶をした。


『Au revoir』

「……さいなら」


うあぁあぁあ、と心で声を上げて一人教室を出る。
そのまま階段を下りて下駄箱で靴を履き替えて歩き出せば、人にぶつかってしまい尻餅をつく。


「うわ、すまん」

『Pardon!』

「へ?」


顔を上げれば目の前に居たのは石垣君で、ぽかん顔だ。
しかしすぐに我に返ったのか手を伸ばしてくれ、その手を掴んで起き上がる。


「怪我しとらんか? よそ見しとったから堪忍」

『Elle peut monter ? pied』

「はえ?」


首を傾げれば、その人は英語ちゃうよな、いや、え、と囁いていたので、あ、と思う。


『すみません』

「あ、ああ、大丈夫やで」

『怪我してないですか?』

「してへんしてへん、逆に大丈夫やった?」

『はい、平気です、違うとこ見てました、ごめんなさい』

「俺こそよそ見しとったからな、すまん」

『いえ、では、失礼します』


頭を下げて歩き出しそのまま自転車の鍵を外し家に帰った。
まさか石垣君にも合うとは思ってなかったから吃驚だが、まあ、もう関わることはないだろう。


*********


翌朝教室に入って座ってナチュラルに挨拶する。


『Bonjour』

「…おはようさん」


よっしゃあぁああ、と思い鞄を机の横にかければ女の子達に囲まれていた。


「おはよう」

『Bonjour』

「ちゃうよ、おはようや」

『あ、おはようございます』

「そうや」

「フランスの何処から来たん?」

『えっとパリ』

「凄いやん、えー、ええな」

「どんなところなん?」


どんなところ? 難しい質問にんー、と唸れば写真ないん? と言われああ、と携帯で写真を見せればええな、と囁く。


「この人誰なん?」


見て見ればお父さんで、フランス語で答えてしまったようで直ぐにお父さんです、と返す。


「ハーフなん? お父さん日本人やね」

『はい、お母さんがフランス人です』

「お母さんの写真ないん?」

『……あー、んー、ないです』

「そっか、残念やね、次写真撮ったら見せてな」

『はい』


そこから色々質問され、答えを繰り返して居ればチャイムが鳴って皆居なくなる。
小さく誰にも聞こえないようため息を吐いて入って来た先生に挨拶をした。


「ほんならまず、着替えなあかんな、男子はここでええやろ、女子は更衣室やで」


皆動き出し彼も立ち上がって制服を脱いでいて、ぽかんと見上げれば、目が合う。


「……」

『……』

「……先生、御堂筋さん分かっとらんです」

「あ、ああ、すまん、すまん、御堂筋着替えや」

『きがえ?』

「そや、体育着持ってきたやろ?」


その言葉にあ、と言ってカバンから体育着を出せば、そやそや、と指さされる。


「それ持って、更衣室行くんや」

『更衣室?』

「こっちやで、こっち、おいでな」

『あ、行きます』


立ち上がって笑っている子の傍に行けば手を握られついて行く。


「うちな日野朝日や、前の席や」

『あ、初めまして』

「初めましてやな」

『ありがとうございます』

「ええよ、その敬語もなくてええよ、分かるか?」

『あー、敬語、分かった?』

「そやそや」


にっと笑った日野さんに笑いかけ更衣室に行って横で着替えて居れば、ドアが開いて女の子が入ってきて日野さんの横に行く。


「三日目そうそう遅刻やな」

「寝れんくてな」

「大変やな」

「まあ、好きでやってるからええのええの」

『おはようございます?』

「ああ、おはようさん」

「この子は月野夜やで、ビッチや」

『ビッチ!?』

「せやよー」

『おう、凄いですね』


拍手すれば二人は顔を合わせ笑っていて、おもろいな、と言われた。
そこから三人で着替え日野さんに手を引かれ教室に戻って椅子に座る。
制服を鞄にしまえば、前の日野さんが振り返る。


「あんな、うちの事は朝日呼んでな」

『朝日』

「せやせや、んで、うちはアリス呼ぶで」

『わかりまし…分かった』

「そやそや、でさっきのビッチは夜言うんやで」

『分かった、夜、言えばいいんだね』

「そやそや、分からん事あったら聞いてな、京都初めてやろ?」

『初めて』

「せやろ、ええとこやで」

『あ、あ、舞妓さん見た、写真』


舞妓さんの画像見せれば、おー、と朝日は笑う。


「体験できる場所もあるんやで? 今度連れてったるわ」

『Merci vraiment.』

「ん?」

『ん?』

「今フランス語? 言うんやった」

『あ、ありがとう』

「ああ、ええよええよ」


笑った朝日は身を乗り出しこそこそ話しかけて来たので耳を傾ける。


「質問攻め疲れたやろ」

『あ……』

「もし嫌やったらうちとおれば誰も話かけてこんよ? うちと夜はあんまり好かれとらんから」

『?』

「まあ、いっぱい友達欲しいんならうちらとおらんほうがええよ」

『いっぱいいらないです、朝日と夜友達です』


朝日を見れば嬉しそうに笑っていて、そんならうちらはダチやな、という。


『ダチ?』

「友達のダチや」

『おう、ダチ』

「あれはビッチや」

『お、おう』

「やめいや、変な言葉教えんなや、こっちとそっちのビッチはちゃうかもしれんやろ」

「あー、そうやね! あいつは変態や」

『変態?』

「そこ、変な言葉教えんなや、後、男子の前で変な発言もやめいや」

「普通です普通」

「普通やない単語がとびかっとった、先生やなかったら怒られとるぞ」

「先生は怒らんのですか?」

「人生色々あるからな、そう言う道も通るやろ、けどな、後悔はすんなよ」

「しません、私好きでやってんです」

『何してるんですか?』

「んー? セッ「流石にそれはやめいや」


朝日が止めて私は首を傾げる。


「なんでもあらへんよ、兎に角、困ったら言うんやで、なんでもええから、お金の数え方とかでもええからな」

『ありがとう、朝日と夜はダチや』


にっと笑えば二人はぶわっと顔を赤くした後照れたようにダチやね、と笑った。


***********


そこから今後の授業を聞きながら身体測定に呼ばれクラスの男女で測る。
身長を図って紙を見れば一センチ縮んでいたので、紙を持ってもう一回と言えば先生は首を傾げた。


『?』

「あ、もう一回や、先生もう一回測ったって」

「ああ、ええよ」


もう一回測ってもらい自分で見れば一センチ縮んでいて絶望する。


『おぅ』

「いくつなん?」

「152センチやってちいさ」

「ちいちゃいな」

『小さくない』

「あははは」


むっとしたが二人はええやんかいらしいよ、と言って頭を撫でて来た。
その後体重は減っていてよし、として他にも図って教室に戻ってから更衣室で着替える。
教室に戻って残っていた先生の説明を受けて授業が終わった。

先生に挨拶してナチュラルに彼にも挨拶。


『Au revoir』

「…さいなら」

「アリス、フランス語になっとるよ」

『あ、さようなら』

「さいなら」


そう言って彼は行ってしまい、朝日と夜が暇? と聞くので頷く。


「ほんなら出かけようや」

「ええな」

『お出かけ』

「せや、何処行こうか?」

「近場でええんやない? スタバとかマクドとかでだべれば」

「折角やし、京都らしい場所がええやん」

「休みの日に行けばええやん」

「おまっ、天才か」

「いや、普通やろ、ほんならどないする?」

「うちファミレスがええ」

「んならそうしようか」


椅子から立ち上がり二人について行く。
靴を履き替え待っててもらい自転車を引いて行けば、二人は自転車を見て、みどと同じやん? と指さす。


「それ、同じやない?」

「そんなマークやったね」

『これデローザです』

「持ち物そのロゴばっかりやな、そういえば」

『お父さんがくれた』

「はえー」

「まあ、ええか、行こか」



自転車を引いてファミレスに着いたので、自転車を輪行バッグに詰め込んで中に入る。
そこから三人で色々お喋りして楽しくて、笑ったり、時間があっという間に過ぎた。


「あー、楽しかったな」

「なあ」

『楽しかった』

「また食べような、連絡先も交換したし、ほんなら帰るか」

「そうやね」

『私あっちだから、自転車で帰る』

「あ、そうなんやね」

「そっちなら別のにすればよかったな」

『ううん、平気、楽しかったありがとう』

「お礼はいらんよダチ、やからな」


にっと笑ったので私も笑いかけ、自転車を組み立てて二人に手を振って漕ぎ出した。
早くも新しい友達が出来て私は満足だ。