03



夜布団で携帯を弄っていれば、見知らぬアドレスから連絡が届いた。
誰だろう、と開いて私は一人携帯片手に固まる。
“ボクや、明日朝練あるからはよ出る、六時に家出るから準備しとき”と書かれていた。
名前は一切載っていないけど誰から来たのか直ぐに理解してうあぁああ、と心で大声を上げる。
ベッドの中でごろごろのたうち回り、フランス語で一人喋ってから深呼吸して、御堂筋です、分かりました。 と返した。
そしてすぐさま階段をおりてお父さんに明日六時に家出る、と伝えまた階段を駆け上がり私はそのままベッドにだいぶして速攻で眠りについた。


翌朝五時に目覚ましが鳴り響いて、眠たい中目覚ましを止める。
ベッドに座って目を擦って欠伸をしてから支度をする。
歯磨きして着替えてリビングに行けばお父さんが起きていておはよう、と声をかけられたので返事をしてお弁当を受け取り家を出た。
自転車に跨れば、慌ててお父さんが出て来て、朝ごはんのおにぎりを渡される。
鞄にしまってもらい、行ってきます、と声をかけ走り出せばいってらっしゃい、気を付けるんだぞ二人とも、と聞こえ横に御堂筋君が来た。


『ボンジュール』

「フランス語や」

『おはようございます』

「おはようさん」


二人で、爆走して学校に着いた頃にはお互い汗がだらだらだ。
部室に入って二人で椅子に座ってドリンクを飲む。
そうや、と御堂筋君が鞄から昨日のボトルケースを渡して来て、返す、と言われたのでお礼を伝え汗を拭った。
それからしばらくして他の人達も来て、お、御堂筋も来とるんやな、というのでおはようございます、と頭を下げれば皆して、頭を下げてくる。


「ボ、ボンジュールや」

『フランス語でした?』


皆頷いたので、すみません、と謝り日本語で挨拶しなおし、朝練に取り掛かる。
昨日と同じで、私は皆のフォームを見て回り、おかしい人が居れば注意した。

八時、朝練が終わり皆着替えるので外で待って、終わった皆が出て来て、御堂筋君が鍵を閉める。
そして振り返り私を見下ろした。


「部活以外でボクに話しかけんといてな、部活の事なら聞いたるけどそれ以外の無駄話は聞かへん」

『……了解しました』

「ほな」


そう言って御堂筋君は歩いて行ってしまい、残った石垣君達が私を見た。


「ええのか?」

『はい、いいのです、では、また放課後です』


頭を下げて私も校内に入って靴を履き替え、一足遅れて教室に入った。
朝日と夜が気づいて手を振ってくれたので振り替えしておはよう、と言えば二人は笑う。


「「ボンジュールや」」

『おう、おはよう』

「おはようさん」

「おはようさん、今日は来るの遅かったな」

『あ、はい、ぶか……色々と準備で遅くなった』


部活していると言ったら御堂筋君に迷惑がかかりそうなので、ウソをついてしまった。
二人はちらっと御堂筋君を見て、そっか、と笑う。


「まあ、ええよ、それより今度の日曜出かけるで」

『どこ行くの?』

「京都巡りや、観光スポット連れてったる」

『わお』

「せやから朝にこの間のファミレスの少し先にあった駅で待ち合わせや」

「んで、今日の放課後パフェ食べ行こうや」

『あ、いいですね……あ、ごめんなさい、放課後予定あります』

「そうなん?」

「残念やね」

『すみません』

「ええよええよ」

「しゃあないよ」


これ後で二人にこっそり部活のマネージャーやること伝えよう。
なんて思って居れば、チャイムが鳴って先生が来たので話は中断された。
先生の話を聞いてHRが終わって先生は、せや御堂筋、と呼ぶので二人で返事する。


「あ、すまん、女の子のほうや」

『はい』

「自転車部のマネージャー入ったんやて? 後で顧問がな入部届出して欲しい言うとったよ、紙もろうて来たから」

『あ…はい』


立ち上がって先生から紙を受け取る。


「ダブル御堂筋で自転車部なんやな、おもろいな、頑張れよ」


先生は笑って教室から出て行き、私はおう、と囁く。
内緒にしたかったのに、くそっ、と思いつつ席に戻れば朝日が振り返る。


「なん? マネージャーやるん?」

『うん』

「ええことやね」


夜も来て笑ってくれたので私も笑って頷く。


『はい、頑張ります』


そう言いながら入部届に名前を書いて二人とお喋りして、一限目を迎え時間は過ぎた。
お昼休み、お弁当を三人で食べて、私は入部届を持って職員室に行く。
ノックして失礼します、と入ったはいいが自転車部の顧問の先生誰?
分からない、仕方ないので担任の先生の前に行く。


『先生、これ入部届、どの先生ですか?』

「お、書いて来たんか、あそこの和馬先生や」

『おう、和馬先生』


先生の前に行って入部届を出せば、マネージャーおらんかったから助かるわ、と言われたので笑いかける。


「大変かと思うけど任せるな」

『はい、頑張ります』

「今年もインハイ出れるから皆頑張っとる、支えたってな」

『わかりました、よろしくお願いします』

「こちらこそ頼むな、あ、せや、丁度良かったわ」


そう言って先生が紙を渡して来た。


「これ今週の日曜日にやる大会なんやけど、皆に出るか聞いてみてくれへんか?」

『分かりました』

「出るんやったら応募するから、今日中に言ってくれ」

『じゃあ、今から聞いてきます』

「頼んだわ、これ、自転車部の名簿な、上の六人が選手として出るから上の六人に聞いてくれるか?」

『わかりました、失礼します、放課後また来ます』


頭を下げて職員室を後にして階段を登る。
まずは三年生から行くか、とクラス表を見れば石垣君達三人は同じクラスだった。
有難いな、と教室に行ってドアから中を覗けば、一番奥で色んな人と楽しそうにお喋りしている石垣君が居た。
話しかけずらいな、でも今聞いておきたいしな、と悩んでいればあれ、御堂筋やん、と聞こえ振り返れば井原君と辻君が居た。


『おう、井原さん、辻さん』

「どないしたん?」

『あの、これなんですけど、出ますか? 石垣さんにも皆にも聞いて回ります』

「大会か、ちょっと待ってな、石やん」


井原君が石垣さんを呼べばこちらを見て、御堂筋、と言ってきてくれた。


「この大会でるか? だって」

「あー、どうやろ、こういうの全部御堂筋君が決めとるんよ」

『あ、御堂筋君ですね、分かりました、じゃあ、聞いてみます』

「わざわざありがとな」

『いえ、マネージャーの仕事頑張ります』

「よろしくな」


はい、と返事をして私は石垣君達に頭を下げ教室に戻って来た。
まだ御堂筋君は戻っていなくて二人とお喋りする。
チャイムが鳴る数分前に御堂筋君が戻ってきて隣に座ったが音楽を聴いていて声をかけられず、チャイムが鳴った。
仕方なくルーズリーフにメモを書いてそっと机に乗せる。
ボケっとしていれば紙が返ってきて出る、と書いてあったので頷いた。
授業を受けながらよく考えたら日曜日出かけるって言ってた、やってしまった。
後で謝らなきゃ、折角誘ってくれたのに、申し訳ない。

なんて思って居ればチャイムがなって授業が終わった。
今日は五限までなので直ぐにHRでそれも終わって先生が居なくなったので朝日と夜に謝る。


『ごめん、大会でるって』

「しゃあないよ、インハイもあるしな」

「終わるまでは忙しいからな」

『私やるからにはしっかりやる』

「うん、それがええ」

「京都案内なんていつでもできるからな、夏休みとかでええし」

『うん』

「ほんなら、しっかり頑張りや」

「私ら応援してるで」

『ありがとう』


二人にお礼を伝え、じゃあ、と別れ私は職員室で和馬先生に出ます、と伝え教室に戻った。
教室には数人の女の子が残っていて、さようなら、と声をかけ鞄を背負えば囲まれた。


「あんな」

「あの二人と付き合うの辞めた方がええよ」

『?』

「日野さんと月野さんや」

『何故ですか?』

「いい噂きかんし、日野さんは喧嘩ばっかりで月野さんは男とっかえひっかえで遊んでるしな」

「だからつるむの辞めて、私らといよう」

『私噂信じません、二人はとてもいい友達です』

「アリスちゃんの為言うてるんよ、日本での友達の作り方知らんやろ?」

「まだ片言やし、日本分からんやろ」

『確かにまだ分からないです、でも、フランスも日本も友達の作り方は違いないです、私はあの二人が大好きです』

「な、なんや親切で言うとるのに」

『お気持ちは嬉しいです、けど、友達を馬鹿にされるのは我慢なりません、二人はいい子です、ダチです、噂を信じて変な事言わないでください』

「なんやそれ」

「親切に言うとるんに」

「日本の事わからんくせに」

『…知ってますか? 自分では親切だと思っても相手からしたら迷惑な事あるって、私フランス人ですかそれぐらい知ってますよ』


私の言葉に女の子達はなんやの、と大声をあげる。
子供かな、と思いつつ、まあ、そうだよな、と一人納得した。


『私はあの二人が大切な友達です、なので馬鹿にしないでください、では部活あるので失礼します』


頭を下げ教室を後にする。
そして部室に入れば遅い! と御堂筋君に怒られた。


『ごめんなさい』

「何しとるん、時間の無駄や」

『すみません、あの、色々と面倒なのに絡まれてました』

「ハア?」

『朝日と夜の友達止めろと、言われました、だから辞めないと言ってきました』

「……」

『日本の事知らないから親切で教えてくれたらしいですが、迷惑ですね』

「……絶対教室でボクに話かけるんやないで」

『はい、迷惑かけません、すぐ準備します』


そう言って私は準備に取り掛かり、今日もフォームのチェックから入った。


*********


翌朝、朝練をして下駄箱に行って開ければ上履きがなくなていた。
おう、と囁き仕方ないのでスリッパを借りて教室に行く。


「「おはようさん」」

『おはよう』

「あれ、どないしたん?」

「上履きは?」

『あ、昨日持って帰ったの忘れて置いてきちゃいました』

「ドジやな」

「かいらしいな」


あはは、と笑い椅子に座って教科書を出そうとしたら机の中身が空っぽだった。
まじかあ、と思いつつ気づかれないよう笑い一限目を迎える。
教科書全部行方不明で仕方なく教科書無しで授業を受ける。
教科書のここテスト出すで、の言葉にどこだろう、と思って居ればことっとテーブルに教科書が置かれた。
横を見ればノートを取りながら、御堂筋君が教科書を置いてくれ指をさすのですぐさまノートに取る。
そこからも教科書を置いといてくれ、優しさに感動した。
なんだかんだ言ってもそういう優しいところが本当に大好きだ。



結局教科書全て見つからず、六限まで御堂筋君が見せてくれた。
フランス語でお礼を伝えノートだけはしっかり鞄にしまう。
そして御堂筋君はHRが終わるとさっさと行ってしまい、私は二人と玄関まで行って別れた。
教科書もう一回買いなおさないとダメだろうな、多分捨てられただろうし。
なんて思いながら校舎裏に行って部室に行こうとしたら御堂筋さん、と声をかけられて振り返れば昨日の子達がいた。
フランス語で面倒だな、と囁けば、何言うとるか分からんよ? と笑みを浮かべる。


「今日スリッパやったねどうしたん?」

『なくなりました』

「可哀想やね」

「私らの忠告無視するからや」

『忠告? お節介の間違いでは?』


はあ、とため息を吐けば憎たらしいわ、と怒られてしまう。
この子達は何してあげたら満足するのだろう、あれか二人とつるまないでこの子達と居ればいいのだろうな。
しかし、それでは私が嫌なので、仕方ないから飽きるまで付き合ってあげるか。
やれやれ、と思って居れば聞いてるん? と言われすみません、何ですか? と答えた。


「だから、私らの忠告聞かんとこれからも物なくなるで」

「次は何無くなるんやろうね」


ポケットから携帯を出してみれば、もう部活に行かないと怒られそうな時間だ。


『あ、すみません、時間ないのでいいですか?』


そう言って女の子達を見れば顔を真っ赤にして突き飛ばされた。
よろけて倒れこむ。
ただそう運が悪かった、もう少し他の回避方法があったのだろうな、と遅い後悔したが仕方ない。
倒れた先にフェンスが壊れて金具が飛び出した場所があった。
そして私はそこで眉の上と頬を深く切ってしまい、血が溢れだす。
それを見た女の子達は顔を真っ青にして走って行ってしまい、私は痛む傷口を抑える。



『っ…おう……シット』


鞄からハンカチをだして抑えるが想像より深くて血は止まらない。
どくどく流れている感覚がある、これはまずいと、私は立ち上がり保健室に向かう。
そとから保健室の扉をノックすれば先生が顔を出しぎょっとする。


「なっ、あかん、はよ中に」


中に入って先生に診てもらうが血は止まらず、先生はあかん、と声を上げた。


「深すぎるんや、救急車呼ぶ、強く抑えて」

『おう、Pardon』


先生は保健室にある電話から救急車に電話をしていて、その後も色んなとこに電話していた。
暫くして担任の先生が来て、御堂筋どないしたんや、としゃがみ込む。


『こけてしまいました、そしたらフェンスが壊れてて金具で』

「なんちゅうドジしとるんや、ここ来る前にお父さんに電話したったから」

『おう』


止まらない血にタオルが赤く染まって行く。
額の上だから余計血が出るのだろう、片目を瞑ったまま待っていれば校庭に救急車が入ってきて、立ち上がる。


『先生、すみません、ご迷惑おかけしました』

「アホ、んな事ええから、こっちです」


救急隊の人が来て恥ずかしい事に担架に乗せられ運ばれた。
そのまま担任の先生が乗り込んでお父さんに病院の場所を連絡してくれる。
応急処置を受けながら病院についてすぐさま傷を縫われ、私はギャン泣きした。
痛かった、いくら大人でも我慢できない痛みがあって、それだった。
わんわん泣いていればお父さんが来て、先生と話ている。
病院の先生には傷が残ってしまう、と言われ、お父さんは泣きそうな顔をしていた。


『私気にしない、心配かけてごめんね』


お父さんを抱きしめれば、お父さんも抱きしめ返してくれた。
そこから痛み止めを打ってもらい、そのせいで私は寝て居た。
起きた時もう自分の部屋のベッドの中でむくっと起き上がる。
そして下に降りリビングに入ればお父さんがいて、立ち上がった。


『おはよう、寝すぎた』

「具合は?」

『少し痛い』

「ご飯食べれるか? それ食べて痛み止め飲みな」

『そうする』


椅子に座る前に鞄から携帯を出して見れば御堂筋君からの怒涛のメールの嵐だった。
おう、と囁いて携帯をテーブルに置いて肘をついて悩む。
どうしよう、絶対怒っている、これは間違いなく怒っている。
ばたばたしていて連絡忘れて居た、やばい、最後のメールがもう知らんで、終わっている、積んだ。
数分悩んで取り合えず謝らなくては、とごめんなさい、今見ました、部活行けなくてごめんなさい、連絡も遅くなりすみませんでした。とメールを送っておく。
夕飯を食べ薬を飲んでお風呂に入ってお布団に入ったが御堂筋君からの返事はなかった。
ああ、相当怒っているのだろうな、と思いながら眠りについた。
翌朝起きたのが九時で雄たけびに近い悲鳴をあげる。
すぐさま制服に着替えて準備してリビングに行けばお父さんが居て、おはよう、と声をかけて来た。


『お、遅刻』

「休むかと思って」

『行く、行くよ』

「やっぱり? じゃあ、送ってく」


そう言えば自転車ないんだった、急いで、とお父さんをせかして車の中で朝食を食べ学校に着いた頃には一限目が終わった。
チャイムを聞きながら教室のドアを開ける。


『はあ、はあ、お、遅くなりました』

「御堂筋、丁度終わったで一限目、それに今日休むって連絡あったって聞いたで?」

『はあ、いえ、着ました、寝坊しました』

「ほんなら、担任に伝えとくな」

『はい、すみません』


先生は出て行き、二人が椅子から立ち上がり、それどないしたん!? と大声をあげる。


『あ、これ、あの、昨日』

「大丈夫なん?」

「平気なん?」

『平気、大丈夫、ありがとう』

「なんでそんな怪我」

『昨日こけて、怪我しちゃった、あはは』

「傷は? 治るん?」

『治る、大丈夫』

「残ったりは?」

『あ……傷は深いみたいで残るらしいです、けど、平気です』


にっと笑えば二人に抱きしめられた。


「無理せんでええよ」

「辛いやろ」

『本当に平気、ありがとう』


ぎゅっと抱きしめ椅子に座ってちらっと御堂筋君を見れば、ばっちり目が合ったのでそっとそらす。
話しかけちゃいけないから、どうしようか悩んでルーズリーフにメモを書く。
昨日はごめんなさい、連絡しないで部活行けなくて、今日は行きたいです、いいですか? と書いたメモをそっと見せる。
すると御堂筋君はそれを取って何か書いて戻された。
ええよ、とだけ書いてあり嬉しくて、にこにこマークを書いて見せればアホ、と書かれる。
そのやり取りの紙をしまい、二限を受け、四限目の途中御堂筋君の教科書を見て居れば傷が痛みだした。
ずきずきして、顔を抑える。


『っ……』


持って居たシャーペンを置いて両手で傷を押えるが、ずきずきと脈にあわせて痛む。
汗が流れ、痛みに耐えて居れば御堂筋君が小さくかがんで近寄ってくる。


「痛いんか?」

『……』


頷けば薬は? と聞かれたのではっと思い出し鞄から薬を出す。
御堂筋君に見せれば飲むんや、と言われ薬を飲んで水を飲む。
四限目が終わるころ痛みも引いて汗を拭う。
そしてチャイムが鳴って終わったので、口パクでありがとうございます、と伝えた。
御堂筋君はん、と囁きお弁当を持って教室を出て行った。
三人でお弁当を食べ、五限が始まる三分前、私は机に頭を乗せる。
ああ、痛み止めって眠気の副作用もくるんだな、と思いながら私は夢の世界に入った。


「アリス、アリス」


肩を揺すられ目を覚まして、はい、と返事をする。
顔を上げれば朝日がいて、笑っておはようございます、と伝えた。


「おはようさん」

『はい』

「授業終わったで、もうHR始まるで」

『……うあぁあぁあ、授業寝てしまいました!』

「そらもうぐっすりや」

「動きもしなければ起きもせんかったな」

『ど、どうしましょう』

「先生が痛み止めの副作用や、って言ってたから平気やろ」

「先生が起こしとったけど、全くおきんかった」

『おう、授業態度の点数さがりました』

「へいきへいき」


しゅん、としていれば先生が入ってきて、御堂筋起きたんやな、と言われ小さく謝る。


「副作用やろ? お父さんから電話あったわ、しゃあないな」

『おう』

「ノートは日野か月野に見せてもらってな」

『はい』


そこから先生の話を聞いて、二人と靴を履き替え一人部室に行けば皆外に居た。


『あ、皆さん昨日は連絡しないで休んでしまいすみません』


頭を下げれば皆振り返り、その間から見えたのは私のデローザだった。


『……』


しかしそこにあったデローザはボロボロになっていて、ホイールもフレームも傷だらけだ。
近寄ってみればもうホイールは駄目だ、フレームは少し歪んでいる。


「す、すみません、俺がだしっぱにしちゃいました」

「お前」

「すみませんっ」

「あれほど自転車はしまっとけ言うたやろ!」

「すいませんっ!!!」


ここは笑って大丈夫です、というとこなのだろう。
そうしたいけど、体はゆう事を聞かず、私はしゃがみ込んで自転車を抱きしめ泣き出す。


『おうっ…あぁあっ…』


ボロボロ泣いていれば御堂筋君が動いた。


「君ら先着替えとき」

「え? せやけど」

「ええから、こんなうろうろしとったら邪魔や」


御堂筋君の言葉に石垣君達は部室に入って行き、御堂筋君が後ろにしゃがむ。


「もらったもんなん?」

『おかっさん…にもらった』

「そうやったんやね」

『誕生日にっ…事故にあう二日前ですっ、これっずっと大切に』


自転車を抱きしめたまま泣いていれば、後ろから頭を撫でられ顔を上げる。


「泣いてええよ」

『……うあっ、御堂筋君』


服を掴めば背中を撫でられぼろぼろ泣く。
こんなみっともないところ死ぬほど恥ずかしいけど、止まらなかった。
数分泣いて、御堂筋君にお礼を伝える。


『ありがとうございます』

「別にボクなにもしてへん」

『でも感謝です、もう平気です』

「ほんなら着替えてくる」

『はい』


涙を拭い、私は自転車を壁にかけそっと撫でた。