「いやっほい!」
くだかれたガラスが、
侵入を拒んできた光が、
ヴォルデモートの腕を、目を、
鮮やかに突き刺す
奇声をあげて入って来た侵入者に向かって
容赦なく死の呪文を叩きつけた
はずなのに
固く握った手の内に
先程まで確かに指に沿っていた杖は見当たらず、
顔をあげれば
そいつは両手で2本の杖を器用に回し、
西部劇顔負けの、ガンさばきならぬ
杖さばきを披露していた
あり得ない
飛び込んでからわずか数秒
そこに居るかどうかも分からない相手に向かって
武装解除を仕掛ける暇が
あるはず、ない
人間は得体がしれないものを
怖がる癖がある
ヴォルデモートは慎重に
侵入者から距離をおいた
「見て、これ!どう?すごいっしょ!?
ノーベル賞もんじゃね?」
「僕の知ってるノーベル賞にそんな部門はない」
「とか言いつつ、さらっと姿くらまし試すのはなにゆえ?」
「君も幼稚園で言われたただろう?
あぶない人間に近づくなと。それを守ってる最中さ」
「ヤレヤレ、嫌味がお得意なのはサラザールの遺伝かな?ってか、いきなりアバダ投げたのそっちじゃん!ワタシの方がずーっと安全な人間だし!」
「…今なんて言った?」
姿くらましできないことに
密かな苛立ちと焦りを
覚えていたからだろうか。
こいつの言葉に自分以外世界の誰もが知り得ない
情報が含まれていた気がする。
思わず聞いて、すぐ後悔した
侵入者は微笑む
「もぅ、ちゃんと聞いてて下さいよ。だから、遺伝ですよ、い、で、ん、サラザール=スリザリンの」
「ふざけるな」
低く呟いて威圧するために顔を近づける
顔も声も中性的で少年みたいなそいつが
月明かりの下、女だとわかった
「ホントにあの人そっくりだ」
苦笑する女
東洋人にしては背の高いその女を
それでもやはり見下ろして、問う
「お前は何者だ?」
生まれて初めて興味を持った人間は
「who。年は…1000歳ちょっとかな」
不老不死だった
アバダ・ケタブラ
全てを謝絶し、終わらせるために作られた
その呪文に繋がれた僕等
If you can dream it ,you can do it.
(夢見ることができるなら
それは実現可能)
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