降り止まぬ雨に全てを流して

Reborn



武道side

何時もと変わらない嫌になる程の平穏な日常。
いつまで経っても仕事を覚えないオレをバイト先の6歳年下の店長は''無能''とバカ扱いし、学生アルバイト達からはコソコソと影で仕事を押し付けられ悪口を言われる等の始末。
憂鬱な日常の中で唯一の支えは、大切な家族である悟兄達。そして、蓮だけだった。
この世で生を受けて26年。未だ彼女の1人も出来た事のないクソ童貞野郎。
女との交流関係と言えば''赤音''姉ちゃんと蓮を除いた、中学時代の同級生だった橘日向ぐらいだ。
しかし、その橘日向も先日不慮の事故に巻き込まれて亡くなったらしい。
「あの頃は楽しかったな」
ふっと一つ溢れ落ちた素直な気持ち。駅のホームから見える雲一つ無い何処までも澄み渡る青空を眺め、オレは中学時代の懐かしい思い出へ思い耽る。
友達ダチとバカしあって遊び回ってたあの頃。
くだらない事で笑い合って、ほんの些細な事で衝突し合って喧嘩したりもした。殴り合いの喧嘩だって何度もした事あった。互いに何日か口を聞かない日もあったけど、ほんの些細な事がきっかけで仲直りをしてまた一緒に笑い合う。
大人になって何一ついい事が見つからなかった、オレの人生の何で唯一輝いていた時代で大切な宝物の思い出。
あの頃から随分と時が経ち、大人へ変わったオレの人生は謝り続けてばかりだった。
「……オレ、何処で間違えたんだ?」
穢れのない澄み渡る青い空から視線を外し、顔を下は俯かせる。
「本当、情け無いよな。オレって」
自嘲的な笑みを浮かべて自信を嘲笑う。このまま、死んでしまおうかな。なんてな。冗談笑いを浮かべた、その直後、オレの身体に強い衝撃が走った。
「え?」
気の抜けた自分の声と線路へ投げ出される身体。すぐ側まで迫り来る電車。
「うそ」
"死ぬ"その言葉だけが頭の中で思い浮かんだ瞬間、オレの脳裏に浮かび上がったのは悟兄達でも中学時代の時の友達でもなく。思い浮かび上がったのは蓮の姿と中学時代唯一の女友達であった橘日向の姿だけだった。

→Reborn 02