降り止まぬ雨に全てを流して

Reborn


今、思えば中学2年生が全盛期。2年のイケてるグループのナンバー2だったし。
唯一、オレに女友達がいた時代。
これは、一種の走馬灯か? そう思った瞬間、ドクンと強く鼓動が脈を打った。
「オイ! タケミチ!!」
聞き覚えのある懐かしい声音で誰かがオレの名前を呼ぶ。
「早くしろよ。閉まっちゃうゾ」
中学時代の時、仲が良かった懐かしい四人組の姿が、オレの視界に映り込む。
「山岸、今週のマガジンみた?」
「みたよグラビア。もう、シコシコしたし」
チ○コばっかいじってたマコトに、メガネかけてりゃあアタマいいと思ってるバカの山岸‼︎
「オマエらさー緊張感なさすぎっ」
「ホントに、今日行くの?」
番はってたアッくんに、幼なじみのタクヤ‼︎
そして、駅の改札所に設置された鏡に映るオレ自身の姿。
「へ? は? え⁉︎ カイキンにボンタン?」
なんだ、このダセェヤンキーは⁉︎ 唖然としながら鏡を良く見詰める。
金髪のリーゼントにダサい制服。良く見慣れた平凡な顔立ち……紛れも無い中学生の時のオレだ。
ダサ過ぎる! オレの全盛期の筈が……。
あまりの自分自身のダサさに嘆きながら、何か手掛かりは無いかとオレはポケットの中を弄る。500円玉一枚と携帯。
「しかも、ガラケー」
「懐かしいー」手に持っていたガラケーをカチと開き、携帯の液晶画面を覗き込む。
「‼︎」
2005年7月4日⁉︎
えっと、今は確か。2017年7月4日で、其処から携帯の液晶画面に表示されている日付を逆算していけば……。
「12年前の今日!?」
なんちゅう、リアルな走馬灯なんだ。ディスプレイに表示された日付に、オレは唖然とする。
走馬灯にしてはリアル過ぎないか?
なんで、オレ12年前にいるんだ?
ぐるぐる頭の中で思考が周り、ぐちゃぐちゃと頭の中を掻き回され頭を抱え込んだ時、クイクイと誰かがオレの服の袖を引っ張った。
誰だ? そう思いながら振り返れば見覚えのある少女の姿……蓮の姿が其処にあった。
「なんで蓮が此処に……」
「タケミチ、大丈夫だよ」
言葉を遮る様に、メモ用紙へ書かれた言葉と温かな蓮の掌がオレの頬を優しく包み込む。
温かい。オレは、蓮の温もりに縋り付く様に蓮の掌に、擦り寄った。
不思議だ。先程まで酷く痛んでいた筈の頭痛が、蓮へ触れた事により痛さが和らぐ。
酷く心地が良い。この温もりが、蓮の温もりがオレは大好きなんだ。
チュッと音を立てて蓮の掌にキスをしながら、すりすりと更に擦り寄る。
「タケミチ……?」
「ん?」
名前を呼ばれ、背後を振り返れば唖然とした表情を浮かべるあっくん達の姿。
「なに?」
オレは、今、数時間ぶりに会えた蓮に全力で甘え中なんだ。
ほんわかな雰囲気を醸し出しながら、オレはギュッと蓮を抱き締める。
「いやいや!! タケミチ、何してんだよ!」
蓮へ抱き着いていたオレを山岸とマコトが引き離す。
「なに??」
「なにじゃねぇよ! なんだよ、その緩みきった顔は!」
「あのもの凄い美女は、お前の彼女か何かか!? てか、なんで、あの子、鎧なんか着てんだ!コスプレか何かか?!」
オレの襟元を掴み、頬を赤く染めながら蓮の姿を見詰めて騒ぐ山岸達。
山岸達みたく騒ぐ事はないが、蓮の姿を見て見惚れるあっくん。
タクヤは、久しぶりに見る蓮の姿から顔を晒していた。
タクヤ、昔から蓮の容姿に弱いもんな。
だけど、今はそんな事よりも山岸が言った言葉の方が大事だ。
「彼女」側から見れば、オレと蓮は恋人同士に見えるのだろうか。そうだとすれば。
 
(*此れは、心の弱い花垣武道の身勝手な脳内妄想です。

 街でデートするオレ達二人。そして、偶々見つけたクレープ屋さんを見た蓮が
「タケミチ、蓮。あのクレープが食べたいなぁ」
 って、照れた表情で頬を赤く染めながら、上目遣いでオレの袖を引っ張っておねだりするんだ。そんな蓮の姿をみて、オレは……。)

 
「仕方ないな奴だなぁ」
「何言ってんだ、オマエ。」
「うわっ。その顔キモっ」
鼻の下を伸ばして、蓮との妄想へ浸るオレの姿を見た山岸達が引いた様な目線でオレを見詰めて居たが、オレは蓮の妄想で余興に浸かっていたのでなんとも思わなかった。