降り止まぬ雨に全てを流して

第一章



離れていた時間を取り戻すかの様に、私とジェドはお互いを強く抱き締め合いながら、沢山話し合った。お互いが知り得ない事、離れていた長い時の間を何をして過ごしていたか。

「蓮は、僕といない時間を何して過ごしてたの?」
「私は……沢山の世界を渡り歩いてたかな」
「へぇ……」
「ジェドの方は?」
「んー。僕も色々と。君と似た様な感じだよ」
「ジェドも私と一緒で世界を渡り歩いてたの?」
「んー。世界を回ってたと言うより取材の為に渡り歩いてた感じかな。あ、僕、こう見えてフリーランスの記者だったんだよ?」
「え、本当に?」
「本当だよ」

あんなに幼かった青年が、久しぶりの再会と共に立派な青年の姿となり、此処の世界へ来る前はフリーランスとは言えど就職して働いていたなんて。

「……私が知らない間に、立派な大人になったんだね」

 フード越しであるものの、私はジェドの頭を優しく撫でた。

「そうだよ。僕は、もうあの頃の小さな泣き虫な男の子じゃない。君に似合う立派な大人になったんだ」

 頭を撫でていた私の手を掴み、強く私を引き寄せて抱き締めると、そのまま私を抱えてジェドは乱れたシーツの上に、私を押し倒す。

「君に婚約を申し込む事だって出来る」

 革製の手袋越しから自身の指と私の指を絡めて握り締めるジェド。

「ジェド……」
「ジェドじゃなくて、ダニーって呼んで……」

か細く縋るような声音。立派な大人になって居たとは思って居たが、私の前では変わらず、あの甘えたで泣き虫なジェド……ダニーのままだ。私は、握り締めて居ない方の手で、ダニーの被っていたマスクを優しく取り外す。マスクの下から現れた、美しい漆黒の瞳と少しだけ癖のある柔らかな髪質。昔から整った顔立ちをして居たが、大人になった彼は更に美しく成長していた。

「相変わらずダニーは綺麗だね」
「何それ。僕に綺麗だと言うのは君だけだよ。それに……」

「相変わらず綺麗なのは君の方だよ」優しく微笑みながら、私の瞼へ口付けを一つ落とす。降り注がれるダニーの愛情に、私は何とも言えない感情に囚われ、心の奥底から溢れおちるダニーの愛おしさに、ダニーの白い喉へガリッと噛み付いた。

「っつ……」

 痛みに呻く頭上から聞こえて来る。口の中に広がる鉄の匂いと独特な血の味。くっきり付いた私の歯型。ダニーは、一度私の上から起き上がると歯型の付いた自身の喉を撫でる。

「キスじゃないけど、喉へのキスは……」

嬉しそうな恍惚で紅潮な表情を浮かべるダニー。

「ダニー……?」

 私の呼び掛けに、ダニーはピクッと反応すると、私の着て居たセーラー服のリボンを手に取り手際良く外して、制服のファスナーを胸元まで下げると大きく口を開けると強く私の首筋へ噛み付いた。