入寮
深い山奥で、ひっそりと建てられた大きな建物の前で、蓮は、常日頃から行動を共にしている絵心から離れて、この建物の管理者の一人である帝襟アンリと行動を共にして居た。
「次……潔世一くん」
アンリから名前を呼ばれた一人の短髪の青年がやって来る。
「はい、どうぞ」
蓮は、潔世一と呼ばれた青年へボディスーツと番号札を渡す。
「あ、ありがとう……」
頬を紅潮させて小さな声音でお礼を口にする潔へ小さく会釈し。
蓮は、名前を呼ばれ次々やって来る選手達へボディスーツと番号札を手際良く渡していく。そして、最後の一人へボディスーツと番号札を配り終えた後、蓮はアンリへ「先に戻るね」一言告げて、急いで絵心の元へ走って戻る。先程から、絵心からより渡されたスマホが異常なくらい震えており、恐る恐る端末を開けばびっしり埋め尽くされた異常な着信履歴。全ては、絵心から掛けられた着信履歴の数々だった。相変わらず異常とも呼べる蓮へ対しての過保護振り。きっと、今戻れば、今日は丸一日絵心から離して貰えなくなる。めんどくさい。と思いながら蓮は絵心がいるモニタールームへと急いで向かう。
*
モニタルームへ向かえば、先程建物前で出会った選手達へ絵心が此処で行われる事の数々を説明していた。そして、扉越しから此方を覗いている蓮へ気づくな否や。此方へ来る様優しく手招きし、モニター超しで映る選手達へ蓮を紹介する。
「この子は、氷雨蓮。君たちの身の回りの補助をしてくれる。くれぐれも、この子には手を出さないように」
よこしまな視線で蓮を見詰める選手達へ、感情の見えないぽっかり空いた漆黒の瞳で選手達の方へ鋭い視線を送る。その瞳の中では、この子に手を出せば、あらゆる情報を使い、お前らを社会的に潰すと物語っていた。そんな、絵心の心情など、露知らず、蓮は呑気に選手たちへ挨拶をしていた。
「まあ。蓮の紹介は良いとして。話を戻すけど……青い監獄で敗れ帰る奴は、この先一生、日本代表に入る権利を失う。ここで勝ち上がるために必要なのはWエゴだ。今から、その素質を測るための入寮テストを行う。さあ、オニごっこの時間だ」
絵心の合図で選手達がいる各部屋の天井からボールが落ちてくる。
「制限時間は136秒。ボールに当たった奴がWオニWとなりタイムアップの瞬間にオニだった一人が帰るファックオフ野郎です。あと、ハンド禁止ねー……。ルールは以上」
それだけ伝えた後、選手と絵心の回線は途切れた。
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