入寮
開催された"オニごっこ"での最初のオニは五十嵐栗夢。彼は、この中でも、いやブルーロック内では他の選手達と比べて全て劣っている。彼が、この中で生き残るには少し厳しいかも。モニター越しで五十嵐を観ながら、他にも絵心から課された"オニごっこ"を行う選手達を見詰め分析を行う。
「蓮……こっちへおいで」
何時もの眠た気な表情では無く、真剣で喰い入る様、モニターをじっと見詰める蓮を絵心は、先程の選手達へ向けていた冷淡な声音では無く、とても優しい声音で彼女の名前を呼び、自身の膝の上を叩く。「此処に座って見ていいよ」絵心の心情を察してか蓮は、そっと絵心の膝の上に座る。
「WオニごっこWはプロもウォーミングアップで行うトレーニングだが、これはストライカーの本質を見極める為に、俺が考案した「エゴイズムテスト」……」
「ただのオニごっこではないってこと?」
「そうだ。だから、覚悟して戦わなくてはならない」
絵心の解説は耳の片隅で、蓮は始まったばかりの"オニごっこ"を先程とは違い分析では無く、単純な考えでモニター越しから観戦していた。部屋に閉じ込められた選手達の行動は、それぞれみんな違う行動をして居た。上手く状況が掴めず戸惑う者。開かない扉を開けようとする者。時間は一刻と無情に過ぎ去って行く。しかし、選手達の中でも気になる者達がいる。其れは、先程、建物の入り口で出会った短髪の青い瞳をした彼と蜂蜜色の彼。
「誰か、気になる人でも居た?」
「うん……。此の青い瞳の子と蜂蜜色の子が気になる」
「そっか……」
潔が持って居たボールを取り、自ら"オニ"となった蜂楽廻。彼は笑顔を崩す事なく、この中で多分。実力も経験もある吉良良涼介、ただ一人を狙い始めた。"オニごっこ"終了まで後4秒。吉良をしつこく狙って居た筈の蜂楽が急にボールを彼から外した。
「キックミス」蜂楽がボールーを外した事で、吉良は安堵した表情を浮かべる。"オニごっこ"終了まで残り3秒。蜂楽が、突如、外したボールは、ゆっくり吉良の後ろに居る潔へ落ちてゆく。
「潔くん……」
「一番、強いやつ……」
蓮は1人確信をしていた。吉良涼介はこのブルーロック内での最初の脱落者だ。
蜂楽が渡した自由で即興なパスで、潔は彼を狙う。例え、彼自身にその気がなかったとしても。無自覚で行う行動でも潔世一は吉良涼介を実力で潰す。"オニごっこ"終了まで残り2秒の所で、蓮の読み通り。潔世一は吉良へ向けてボールを蹴り、吉良は潔のボールを避ける事が出来ず、ボールは吉良の整った顔へと思いっきり当たった。急な強い衝撃で地面へ無様に倒れ込むのと同時でオニごっこが終了の鐘がなる。
「……潔くん? 何……やってんの? え? どうゆうこと? 何……コレ……?」
「……違う……。ごめん……その……だって……急にボールが来たから……」
潔世一は、蓮の読み通り。無意識ではあるものの、この中で実力があり、これから先ライバルになる筈だった彼を……吉良涼介を潰した。もうしかしたら、この青い監獄の中で1番の成長を遂げるのは、案外、潔世一なのかも知れない。彼には、凄く惹かれて興味をそそられるものがある。一度、ゆっくり彼と話してみたいと
蓮の心の中で、ほんの小さな欲が生まれる。そんな、蓮の心情等、露知らず絵心は切断していたモニターを繋げ、オニごっこが終了した事を無情にも選手達へ告げる。
「お疲れ。才能の原石共よ。ここでは結果が全てだ。敗れた者は出ていけ! 吉良涼介、失格!!」
優しさの欠片もなく告げた、絵心へ対して吉良は納得出来なかったのか、画面越しの彼へ大きな声で怒鳴る。
「……フザケンなよ。こんなやり方で……W杯優勝なんか出来るかよ……こんな遊びで……何で俺が……」
吉良の口から出たW遊びWと言う言葉へ対して蓮は、ピックと反応する。
「俺みたいな才能ある奴の将来が潰されなきゃなんねぇんだよ。俺は、日本の宝だぞ!? あ!? 俺よりイガグリとか潔くんのが才能あるってのか? あ!? 」
敗北したことで、理不尽にもサッカー人生を奪われた事へ対して怒りが止まらに彼。彼、の怒りの感情も理解できる。
「そもそも、こんなWオニごっこWになんの意味がある!? こんなんサッカーじゃない!! サッカーと何の関係があんだよ」
「……関係あるよ」
今まで、絵心の膝の上で大人しくしていた筈の蓮が静かに口を開き、筆談で意思疎通することなくはっきりと自分の声で吉良へ静かに告げる。
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