ある日の夜。常日頃から共に過ごしている悟の元から離れて、私は数少ない呪術高専の一生徒の一人である伏黒恵と共に、杉沢第三高校の百葉箱の中で保管されている特級呪物を回収すべく杉沢第三高校を訪れていた。
「こんな所に特級呪物保管するとか馬鹿過ぎるでしょ」
目の前にある百葉箱を見ながら呟く。
早く呪物を回収して、早く帰ろう。施錠された鍵を開けようと手を伸ばした時、施錠されている筈の鍵が、誰かの手で壊されている事に気がつく。
何故か唐突に嫌な予感に苛まれる私と恵は急いで百葉箱の除くも、嫌な予感は的中。百葉箱の中は空の状態だった。
急いであたり周辺を隈なく探すも特級呪物は何処にも落ちていなかった。
居なかった。
消えてしまった特級呪物へ対して、特別焦った様子を見せる事無く、恵は冷静でテキパキと自身の担任である五条悟に連絡を取った。
「ないですよ……」
「え?」
「百葉箱空っぽです」
「マジで? ウケるね〜夜のお散歩かな?」
「ぶん殴りますよ」
電話越しからでも分かる程の悟の良い加減な態度。
此れには、流石の私も呆れ気味。
けれども、直ぐに悟のこの良い加減な態度は、今に始まった事ではないと、恵の気持ちも考えず心の中で勝手に自己完結する。
悟へ対して顔を顰めている恵の隣で、私は一人星空を眺める。
「あっ。それ、取り戻すまで帰ってきちゃ駄目だから。後、蓮は早く僕の元に帰ってくる様に伝えといて」
通話を一方的に押し切られたのか恵の雰囲気が何処となく怒気を感じる。
「今度、マジで殴ろう」
顳顬に青筋を立てて、ボソリと小さく呟いた後、恵は持っていたスマホを制服のズボンのポケットの中へ仕舞い込んだ。
恵の様子を直ぐ側で、悟への呆れ気味、恵への申し訳なさで胸中葛藤しながら、ひっそり心の中で恵へ向けて謝罪をしたが、襲い来る睡魔に勝てる筈も無く、半分夢見心地な気分だった。
ぼんやりとする私の様子に、恵が心配げな表情を浮かべる。
「蓮さん、大丈夫ですか? 何時もと比べて随分眠たそうですけど……」
不安気な表情で私を見詰める恵を「大丈夫だよ」
と筆談で告げ、優しい表情で恵を見つめ返す。
すると先程の様から一変、トゲトゲしかった筈の恵の雰囲気が少し和らぐ。
優しい表情、雰囲気で「あまり無理はしないで下さいね」恵は蕩ける程の優しい笑みを溢した。