平和に行きましょう。

えりす


「っぎゃあああああああああああああ!!!!!」
 内臓が無理やりひっくり返るような浮遊感。普段味わうこともない感覚に頭が混乱し、兎にも角 にも生き延びたいと生存本能で近くの「何か」に手も足も回してしがみ付く。
 放り出された車、飛び散るガラス片、瓦礫、あと人etc。それらが落ちていくのをスロー加工された視界に収めながら、エリスは感じた恐怖のままに叫んだ。大声を出したのは久々だが、何だ案外出るんじゃないか、と頭の片隅で考える。
 思えば最後に叫んだのは5年前の教会ではなかろうか……。暴力教会の横柄な姐さんや品性を捨てた女ガンマンにおちょくられる日々に耐えかね、もといブチ切れてステゴロをして以来ではなかろうか。あの後大シスターから説教を喰らったが、あの2人に泡吹かせたのは事態を知った周囲からべた褒めされる位素晴らしい経験だった。そういやよく考えたらこれって走馬灯じゃね。


「……おっちゃん、帽子」
「おう」
 ほぼ無傷のまま地面に足をつけたエリスが、落下時に咄嗟に掴んでいた帽子を男へ渡す。結局仕事だったトランクは男とその仲間らしい着物により見事原型を留めない程破壊し尽くされていたし、このままおちおち戻ろうものなら報酬は良くて風穴、悪くて…。
「んん?お前、どこ行くんだ」
「逃げるに決まってるだろ」
「行く宛があるのか?」
「うるせー!世話焼く気もないのに聞くなよ!!」
 堪えていた涙が滲む。
 安全バーのないジェットコースター、ゴム無しバンジーをした経験して泣かない子どもはいない。銃撃戦なら慣れっ子だが、地上数十メートルから飛び降りるなど自殺行為は初めてなのだ。エリスは、自分がまだただの子どもだと自己評価している。背伸びをする余裕などない、しようものなら不安定な所を突かれて崩されるのだ。少なくとも生まれ育った場所ではそう生きてきた。比較的生活の保証された教会でも、育て親が育て親だったのだから。
 目元を潤ませて袖で拭い始めた子どもに、今度は次元が度肝を抜かれた。女子供だてらに運び屋として自分達を翻弄せしめ、挙句依頼主の敵対組織に追われ始めて三つ巴になろうとも大立ち回りを演じてみせた胆力は、さっきまで子どもだということを忘れさせるくらいには感心させた。
 その子供が、本当に子どもらしくえぐえぐ泣き始めたら、苛めたようなバツの悪さは感じる。






「親からどんな教育受けてやがんだこのガキ!!」
「目には目を、暴力には暴力で!」
 育て親から教わり唯一役立った心構えだが、しかしハンムラビ法典も真っ青なものだと思わなくもない。エリスが物心つき始めた頃からは武器の目利き、情勢について様々な分野の教育を受けてきたが、
























エリス
18歳。元ロアナプラ市民。リップオフ教会に捨てられた孤児として大シスターに敬虔()なシスターになるべく育てられてきたが、反抗期を迎え出奔。シスターの名残でメダイを持ち歩いている
射撃は「数打ちゃ当たる」の心構え。下手ではないが決して上手いとも言い難い腕前なので、銃よりも刃物や暗器を愛用している

擬似家族的な愛人契約を結び、生活している
ある時は普通のサラリーマンの養子、ある時は富豪の娘として等独自のネットワークを作り転々としている。現在は五股している
愛嬌があり狡猾


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