平和に行きましょう。

丙ちゃん2


 丙のとーかちゃん、というと隠の中ではちょっとした人気者だ。鬼よりおっかねぇ風柱の継子をしているから滅茶苦茶恐ろしいのではと思いきや、いつも礼儀正しく朗らかに挨拶や言葉を掛けてくれる優しい女の子である。でも優しいだけでなくて、ゲスメガネの公序良俗に反しかねない隊服を貰って、「前田さんがここで試着して表を歩いてくれるなら着ます」と笑顔を言い放てるいい性格もしている。

 燈火の目印は、いつも身につけている若草色の襟巻きだ。じっくり見ると花萌色もあり、格子柄でちょっとお洒落な模様になっている。それをいつも巻いて、首の後ろで蝶蝶結びにしている。一度普通に巻いていたら任務中風に攫われかけて、それ以来は軽く結んでいるという。
「師匠がですね、何だか急にくれたんですよ」
「不死川さんが!?燈火ちゃんも贈ってくれてからずっと付けてるの?」
「外に出る時は必ず」
「きゃあーーーー!!!!」
 隣で聞いている伊黒は、あぁあの時のあれかと思い出す。不死川を筆頭にガタイの良い男達が揃って「あの店はダメだ」だの「まず女に好みを聞け」だのと色めいた会話をしていたので白い目で見ていたが、よくよく聞けば詫びの品の相談だった。胡蝶と悲鳴嶼が青筋を立て、事情を聞いた周りも引いた目になる位の事をしでかしたらしい。冨岡ならともかく不死川とは珍しい、位には思ったが、その時はそれ以上興味はなく話の輪にも入らなかった。
 だが、不死川の継子が今側にいて、贈り物を貰ったと言っているのだから、何となく話が繋がった。継子本人には襟巻きに込められた謝意など微塵も伝わってない様子だが、愛着を持って普段使いされているのだからそれで良いのだろう。伊黒だって甘露寺に長靴下を渡して使ってもらっている。気に入って普段から使われていると、相手は気にしていなくても贈った相手はそれで結構満たされるのだ。
「冷え性なのでとても嬉しいですし、あと」
「あと?」
「行冥センセの羽織と同じ色なので気に入ってます」
「えっ!?……あ、あー!確かに悲鳴嶼さんと同じ色、ね!?」
 んぶっふ、と口に含んでいた茶を吹き出しそうになった。この場に不死川がいなくて良かった。
 その若草色は多分不死川の刀身と近い色だから選ばれたのだ、とは言えなかった。だって燈火本人は「悲鳴嶼さんとお揃い」という点で気に入っているのだから、下手なことを言って使わなくなったらその内下手人の伊黒に辿り着いて絶対面倒なことになる。冨岡なら口にしたかもしれないが、伊黒は沈黙したまま、流石に哀れになって不死川に合掌した。この場合、間男は悲鳴嶼になるのだろうか。この世で最も間男なんて肩書きが似合わない男だが。
「格子柄もそれっぽくて好きだし、よく見たら猫の模様入ってるんです。センセは猫好きだし、尚更それっぽいなぁって」
 多分それは女の子らしい模様を考えただけだ。無理やり悲鳴嶼さんを当て嵌めるな。
























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