平和に行きましょう。
幼女よん
「ん?エンジュ、ナマコブシ捕まえてきたのか」
「いや、それがその…」
赤い猫っ毛に埋もれるように、脳天に鎮座するナマコブシは我が物顔で揺るぎない。その反面、珍しくあからさまに困った顔で頬をかくエンジュは、どう説明したものかと口をモゴモゴ動かしては呻いている。
数時間前、アーカラ島のコニコシティに行ってくると意気揚々と出掛けていったとクチナシは記憶していた。いつの間にか仲良くなっていたらしいライチと食事をするんだと随分なはしゃぎ方で、ようやく性別相応の嗜みを覚えたのかと安堵していたのは内緒だ。
「んーーー…、ナマコブシについてどこまで知ってる?」
「ナマコブシぶん投げたら日給2万」
「ぶっし…」
「凄いあくどい言い方だなぁ…」
ポケモン愛護団体が聞いたら目ん玉ひん剥きそうな言い方だが、確かに間違ってはいない。
「まぁ殆ど正解」
「はぁ…?」
「ぶん投げる理由が、リゾート地の景観保つのもあるけど、この子ら気に入った場所からテコでも動かないから、無理やり海に帰してご飯食べさせてんの。それでもまた戻ってくるから、毎日繰り返し」
「で、気に入られて帰ってきたって?」
「引き剥がそうとしたら、この子内臓出して抵抗してきて無双してた」
「何それ」
可愛い顔してえげつない。じっと見つめていると、ナマコブシが口から白い手のようなものを伸ばし、チロチロとエンジュの額を撫でている。
なるほど、しっかりと懐かれているらしい。
「そもそも、ライチと飯じゃなかったのか」
「島巡りの大試練が急遽入ってドタキャンになったんだよ。すぐに帰るのも寂しいから、適当に歩いてたらホテルのにーちゃんにスカウトされてやってみたら、この有り様」
災難だ、と口振りは迷惑そうだが、顔は何だかんだ愛着が湧いていますと言っている。
「捕まえてくれても良いって言われたし、気に入られたんなら良いかなって」
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