平和に行きましょう。

そのに


 絹を裂くような悲鳴が上がった。箱の中身にあっただろう狂気は沙良の理性を易々と崩し、剥き出しの本能へその牙を突き立てた。水中で溺れたかのように必死に肩で呼吸するが、爆発寸前の心臓は激しく肋骨を叩くだけでその脈拍を落ち着かせる兆しは無い。恐怖で崩れ散った腰は情けなく震えるだけで、足掻く手足は床の木目を引っ掻き、這う這うの体で何とか物置部屋から出た。
「なんじゃあ、泣き喚きよってからに…」
 水場側の廊下から現れたのは、最初出くわした男達よりも更に一回りは大柄な熊のような男である。沙良の劈く悲鳴に反応し刀身が鈍く光る大振りな鉈を抜いていたが、特に外敵がいないと見るとすぐ様構えを解いた。存外思い遣る気持ちはあるのか、呆れた口調であるものの「ガキに見せたアカンもん置いとくなや…」と長持へポツリ文句を漏らした。
「えぇか、嬢ちゃん。ついでに言うといたるけんど、こん中身におったんは勝手に山出た挙句に猪に襲われたアホや。散歩する分に外出てもええけどな、山にゃ出たらあかんで」
 長持を指差した脅しは、内容の割には優しげな言葉遣いではあった。
「今見たもんは忘れとき」
 最後に沙良が頷くと、男は物置部屋の長持と周囲の赤茶けた道具類をまとめて片し、それらを担いで正面玄関へと向かって行った。






















































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